グーグル時代、売上より社会のことを考えろと怒られた|藤本あゆみ(at Will Work)〈前編〉

やりたいことを実現し、新しい働き方を自分でつくる。そんな少し変わったキャリアを切り開いてきたパイオニアにインタビューをするシリーズ。第8回となる今回のゲストは、個人の意志を尊重した働きやすい社会をつくる社団法人at Will Workの代表理事、そしてスマホでできる資産運用のサービスTHEO(テオ)を提供する株式会社お金のデザインの広報マネージャーという、2つの仕事を掛け持つ藤本あゆみさんです。その前はグーグルで営業として働きつつ、テクノロジーにより女性が直面する問題の解決を目指す「Women Will」というプロジェクトにも携わっていた藤本さん。意外にも学生時代に志望していたのは、働き方や営業には関係ない「ドキュメンタリーを制作する仕事」でした。

映像制作志望だった学生時代を経て、人材系企業の営業に

—まず、今の「二足のわらじ」の勤務形態に至るまでの流れを、大学入学あたりから教えていただけますか。

 高校を卒業する頃は、ドキュメンタリー番組の制作に携わりたいと考えていました。ドキュメンタリーを観るのがもともと好きだったんです。それで、「映像の専門学校に行く」と言ったら、親と高校の先生にものすごい勢いで反対されて。結局、東京経済大学のコミュニケーション学部で実技や制作も含めたメディア・コミュニケーションを学べるコースがあったので、そこに進学することにしました。大学に通うのと並行して、テレビの制作会社でADのアルバイトもずっとしていました。そこでは、CSの音楽バラエティや企業の宣伝VTRなどをつくっていたんです。制作現場は楽しかったですよ。でも、なかなかドキュメンタリー制作には関われなかったし、現場の人たちの勤務環境が凄絶で……。

—制作の会社は忙しそうですね……。

 出社すると、泊まり込みで作業していたディレクターさんたちが、梱包材に包まって床で寝てるんです。「直接寝ると痛いからね」と言ってたんですけど、そういう問題じゃない、と(笑)。流し台で体を洗っている人を見るのも、日常茶飯事。家に帰れないくらいの激務が当たり前だったんです。だんだん、「私は他のすべてを捨ててまで、この仕事がやりたいのか」と考えるようになりました。

—現在は働きやすい社会づくりに向けた活動をしている藤本さんも、当時は「職場の働き方を変える」という方向にはいかなかったんですね。

 まだ社員として働いたこともないひよっこでしたから、それはさすがに(笑)。本当はそのままその制作会社に入社する予定だったんですけど、迷いがあったので大学3年になったときに就活を始めてみたんです。そうしたら、世の中にはいろいろな企業があって、いろいろな仕事があると視界が開けました。その時、父との会話を思い出したんです。父は人材紹介の会社に勤めていたので、「仕事は人生の中で多くの時間を占めている。その時間を楽しく、情熱を傾けられることに使えたら一番いいよね」「そういう人生を見つける手伝いをするのは、大きなやりがいを感じる」という話をしたことがあって。それで、人材紹介事業と転職情報の雑誌やサイトを運営している会社に就職しました。

—グーグル出身というところから、外資系のキャリアを想像していたのですが、映像制作会社のアルバイトから日本の人材系企業へと、全然イメージと違う流れです。

 そういうのって、キャリアプランなどをちゃんと立てて転職する人の職歴ですよね。私、きっちり計画してやるのが苦手なんです。だから、キャリアも出たとこ勝負で積み重ねてきたところが多くて……おそらくここからも予想を裏切る展開が続くと思います(笑)。そもそも、「人の人生を豊かにするような仕事を紹介したい」と思って人材紹介の会社を選んだのに、配属先は雑誌の求人広告の営業職だったんですよ。

結婚を機に退職。そしてグーグルへ

—配属希望がかなわなかったんですね。

 最初は「こんな話聞いてない!」と思いました。でも、クライアント企業の魅力や価値観を、ターゲットに伝わるように紙面で表現するというのは、なかなか難しく、そしておもしろい仕事だったんです。だんだんとのめり込み、3年目には、当時最年少でマネージャーに昇格することもできました。で、5年くらいその仕事を続けた頃、社内の後輩と結婚することになったんです。社長に「結婚します」と言ったら、「どっちが辞めるの?」と聞かれまして。

—結婚したらどちらかが辞めなければいけない。なかなか古風な会社ですね。

 そこまでこだわりもなく、「じゃあ私かな」と思いました。そのとき、28歳。出産前に転職するなら今がチャンスだとも思ったんです。特に次も決めずにぽんと辞め、それから転職先をいろいろ探し始めたんです。もともと職業柄、競合の求人サイトもよく見ていたので、どんな会社で、どんなタイミングに、どんな求人があるかということはよく知っていました。大きな枠の派手な広告を出しているところは、特に。せっかく転職活動をするんだから、今まで知らなかった会社に出会いたいと思い、画像ゼロでテキストだけの地味な広告枠の求人を1つずつ見ていったんです。そうしたら、そこに「グーグル株式会社 営業職募集」とありました。

—ここでグーグルと出会うわけですね。何年のことでしょうか。

 2007年です。でも、最初は半信半疑だったんですよ。あのグーグルが営業職を募集してるわけないだろう、と。だから、似た名前の違う会社だったらネタになるかなと思って、なんとなく面接を受けに行ったんです(笑)。そうしたら、オフィスに「Google」ってロゴがあって、「本物だ……!」となりました。

—入社してどんなお仕事をされていたんですか?

 代理店営業チームのサポートです。前職で5年みっちり営業をやったので、今度はあまり外に出ないような仕事がしたくて。「君の経歴だと営業なんだけど……」と言われながらも「いや、大丈夫です」とよくわからない返事をして、サポートにまわらせてもらいました。でもね、つまらないんですよ……。

—希望してサポートになったのに(笑)。

 代理店の方と一緒に営業先に行く機会などがあると、「自分ならもうちょっとこうしたい」ってやっぱり思っちゃうんですよね。でも、自分の職務の範囲では言えない。そうしているうちに、営業職への配置換えが通達されました。それが2009年のことです。

長時間働いても、ミッションを達成しないと評価されない

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tarokappa “自由かつ、その自由には責任がある、ということでしょうか。「あなたは何を成し遂げるのか」「あなたは何で貢献するのか」” 3年以上前 replyretweetfavorite

the_kawagucci 「グーグルとしてどう仕事をするのか」 「グーグルでしかできないこととはなんだろうか」 「お前の考えかたは小さすぎる!」 「うちの研究室」とか「サイエンス」に読み替えるとまったく違和感がない。 https://t.co/9sVjE29eTt 3年以上前 replyretweetfavorite

the_kawagucci 「グーグル.企業風土..ミッションであり勤務時間で評価はされない」 「あなたは何を成し遂げるのか..何で貢献するのか」 「.お客さんのビジネスが大きくなれば.分広告が入ってくる.お客さんのビジネスが成長することを第一に考えるべき」 https://t.co/9sVjE29eTt 3年以上前 replyretweetfavorite