三浦弘行九段の「不正疑惑」「竜王戦七番勝負不出場」「年内の出場停止」などを伝える、10月12日の将棋連盟発表から、2週間が過ぎた。その間、疑惑を否定する三浦九段側から、2度に渡って反論文が発表されるなど、事態は混迷を深めつつある。
現在は、現役棋士が名前を明らかにして、率直な声を表明するのは、難しい状況のようだ。
ここでは2007年に引退した桐谷広人七段と、コンピュータ将棋開発者の保木邦仁さん(Bonanza作者、電気通信大学准教授)のコメントをご紹介したい。
桐谷広人七段のコメント
(桐谷広人七段)
私も詳しい話はよくわからないけれども・・・。電話で、三浦九段はシロだ、と言ってきている先輩の(引退)棋士もいて、週刊誌に書かれていること(細かい経緯)と、全然違う話を聞かされます。
(10月3日のA級順位戦で実際に対局した)渡辺竜王が(三浦九段を)あやしいと言うのなら、それはやっぱり確信があるんでしょう。
でも、証拠がないのなら、理事会の(三浦九段に対する)対応はよくない。これから、シロになるか、クロになるか、わからないけれど、もし証拠がなくてシロだった、ということになって、渡辺竜王が悪者になってしまったら、どうするのか。
何にしてもね、理事会の不手際です。伊藤英紀さんのことでも、最初から謝っておけばよかった。
[編注:将棋連盟の機関誌『将棋世界』の連載エッセーに、コンピュータ将棋開発者の伊藤英紀さんを誹謗中傷する一文があり、ついには名誉毀損をめぐる裁判となって、後に謝罪広告が掲載された]
将棋連盟は、昔は、(立場の)弱い棋士にも配慮するところがあってね。今はそれがなくなってしまった。今回の件をきっかけにして、いい方向に進んでほしい。
保木邦仁さんのコメント
(2007年3月、保木邦仁さんと渡辺明竜王)
『週刊文春』は買って読みました。いずれこういうこと(不正疑惑)があるのかな、とは考えていました。『文春』の記事を読む限りでは、(三浦九段は)TeamViewerのことを(若手棋士に)聞いただけのようですが。
[編注:三浦九段がスマホのアプリ「TeamViewer」を使って自宅のPCの遠隔操作をしていた、などの疑惑を三浦九段は否定し、将棋連盟側からは現在のところ物証は示されていない]
携帯端末(で動くソフト)が強くなるのは、もっと時間がかかるのかと思っていました。人工知能がネガティブなものと取られてしまう一例になるんですかね。将棋を指す人にとっては、将棋プログラムは余計なものと思われてしまうのかもしれません。
でも、スマホに「技巧」は入れたいですよね(笑)。有用なツールですし。対局中に使ったら、もちろんダメですが。[編注:「技巧」は2016年コンピュータ将棋選手権で準優勝したソフト。三浦九段が対局中に参考にしたのではないかという疑いが持たれているが、三浦九段は否定している]