​男色は他の国のせい!? オスカー・ワイルドの愛と悲劇【前篇】

近世・近代を通じて吹き荒れたヨーロッパの男色弾圧。なかでも、激しかったのがイギリスで、天才小説家オスカー・ワイルドの悲劇は、当時の世相を端的に象徴するもののようです。唯美主義のプリンス、オスカー・ワイルドに待ち受けていた運命とは?
劉邦の宦官』や『九度山秘録』で話題の、新進気鋭の歴史小説家・黒澤はゆまが、歴史のなかの美少年を追って世界中を飛び回る人気コラム!

男色を互いのせいにしあうヨーロッパ諸国

世界では例外的に男色に対する風当たりの強かったヨーロッパ。

彼らは男色を大いなる神の教えに反する悪徳とし、真のキリスト教徒にそんなものがいるはずがないと信じていました。しかし、そうはいっても、自然の摂理で男色家は生まれるわけで、そんな場合、彼らは悪い外国からの影響で、不信心者が生まれたのだと考えたようです。

たとえば、イタリアでは男色のことを「イギリス人の悪徳」と呼び、フランスでも「ドイツ人の悪徳」とか「イギリス人の悪徳」とか呼んでいました。

すごいのはイギリスで、仕返しとばかり「フランス人の悪徳」「イタリア人の悪徳」と呼ぶだけでなく、「スペイン人の悪徳」「ブルガリア人の悪徳」、果てはイスラームの大国トルコにまでなすりつけて「トルコ人の悪徳」まで、全方位に喧嘩を売っていました。なるほど、EUから離脱するわけですね。

ともあれ「自分のとこの文化じゃない!」という点では終始一貫していたヨーロッパ。男色への嫌悪は、無論、山谷あるのですが、時代が下るにつれ増していきます。

中世の闇を払い、開放的な印象のあるルネサンス期でも、少し調べただけで、フィレンツェで1432年に「夜の役人」と呼ばれる夜間警察隊が組織され、男色の取り締まりに当たっていたという事例が見つかります。カトリックの総本山ローマでも男色家は火刑、言論の自由が完全に保証されていたはずのヴェネツィアでも斬首刑でした。

1570年代には、同性婚をしたカップル27名を何年もたってから逮捕し、うち11名を火あぶりの刑に処しています。

そのくせ、芸術の世界では可憐なスミレのような少年を好んだレオナルド・ダ・ヴィンチと、ボディビルダーのような成熟した肉体の男性を好んだミケランジェロという男色家同士が競い合い、軍事や政治の世界においては、チェーザレ・ボルジアのような男も女もどんと来いのバイセクシャルが活躍していたわけですから、イエス様の網の目も粗いのか細かいのか分からなくなってきます。

近代的な仕組みで取り締まられていく男色行為
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fujiatsut 男色は他の国のせい!? オスカー・ワイルドの愛と悲劇【前篇】|黒澤はゆま @hayumakurosawa | 約3年前 replyretweetfavorite

mame623 男色は他の国のせい!? オスカー・ワイルドの愛と悲劇【前篇】|黒澤はゆま @hayumakurosawa | 約3年前 replyretweetfavorite