派遣の非常勤教師が公共金融機関に入るまで

戦争を経験した人の高齢化が進み、戦争の語り部となる人が少なくなっている昨今。フランス人の女性と同性婚した牧村朝子さんが、フランス人の祖父「ルネおじいちゃん」から、おじいちゃんが体験した戦争の話を聞く「ルネおじいちゃんと世界大戦」。満を持しての再開です。ナチスドイツの手に落ちたパリで、ルネおじいちゃんはどんな暮らしを送っていたのでしょうか。
牧村朝子さんによる渾身のノンフィクション連載です。(初回はこちら

ある人にとっての悪者が、ある人にとってはヒーローだ、なんていうことはよくある話だ。

私のおじいちゃんは—いま、目の前のソファで、足の悪いルネおばあちゃんのひざかけをかけ直しながら微笑んでいるルネおじいちゃんは—75年前、当時の政権にとって“悪の組織”とされていた団体への入団希望者だった。もっとも今のルネおじいちゃんは、フランスを守った英雄として、数々の勲章を持つ伝説のヒーローになっているのだけれど。

1941年。

ナチスドイツの手に落ちたパリで、若かりし頃のルネおじいちゃんはやきもきしていた。敗戦により、フランス陸軍中尉の肩書きも失い、非常勤の派遣教師として、わずかな配給のパンを噛みしめる生活。戦時中の日本と変わらない灯火管制により、パリは夜ごと深い闇に飲まれていた。

そんな暗闇にあってもルネおじいちゃんは、ふたつの光を見据えていた。
ひとつは、預金供託金庫の採用試験への合格。
もうひとつは、当時の政権にとっての“悪の組織”—ナチスドイツに抗う革命集団、レジスタンスへの入団である。

「当時のパリでは、みんなどんな生活をしていたんですか?」

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ルネおじいちゃんと世界大戦

牧村朝子

第二次世界大戦終戦から、今年で70年。「戦争」という言葉を聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか? 日本人にとっての戦争は、映画や教科書や遠い国のニュースの中のものとなりつつあります。そんな中、フランスで国際同性婚を...もっと読む

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コメント

RyoAster |牧村朝子 |ルネおじいちゃんと世界大戦 https://t.co/xQ1cT9aZwz 私このシリーズとても好きです。いつか映画になったらいいのになって思っているの。 約2年前 replyretweetfavorite

ow_157 https://t.co/UQargfd0Zf 約2年前 replyretweetfavorite

chilican_tw 占領下パリの反ユダヤ主義について、当時のフランス人の感情が語られるのを読むの、ぼくはほとんどなかった。読んでよかった。 約2年前 replyretweetfavorite

Singulith >「ユダヤ人を収容所送りにすることに、当時のフランス政府までもが手を貸していたんだ。……いや、フランス人、と言った方がいいかもしれないな。政府に限らず一般のフランス市民にも、ユダヤ人を憎む者は少なくなかった」  https://t.co/YkA53etm2Q 約2年前 replyretweetfavorite