ハードルが高いことをやれば、何かが生まれる|真鍋大度(ライゾマティクスリサーチ主宰)〈前編〉

やりたいことを実現し、新しい働き方を自分でつくる。そんな少し変わったキャリアを切り開いてきたパイオニアにインタビューをするシリーズ。最終回となる今回は、インタラクティブなアート作品やPerfumeのライブの演出の技術サポートなどで注目を集める、ライゾマティクスリサーチ主宰の真鍋大度さんにお話をうかがいました。2016年リオ五輪の閉会式で絶賛された東京五輪へのフラッグハンドオーバーセレモニーでも、AR演出やプロジェクションマッピングの演出に携わった真鍋さんは、制約が多いときこそ、新しい何かが生まれると語ります。


—リオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーは、異国の地での大舞台。難しいことだらけだったのではないでしょうか?

 リオのときは、基本的に本番一発でやらなければいけなくて、リハーサルができないという制約がありました。行ってみないとわからないこともたくさんあるので、シミュレーションするためのソフトウェアを開発するなど、いろんなことをしましたね。でも結局、それを作ったことによって、新しい光のパターンや映像の作り方などを見つけられたりしたんです。

 条件がちょっと厳しかったり、困難なことがあったりすると、みんなで知恵を出して、新しいものが生まれることが多い。僕らは、結構ハードルが高いことばかりやっているんですが、やれば何かが出てくるんだっていう確信があるんですよね。

 僕は、無茶なことを言われたほうが燃えますね(笑)。

—簡単にできてしまうことより、やりがいがあると。

 なかには予算もスケジュールも、何も問題がない案件もありますが、それがうまくいくかというと、意外とそうでもないんです。また、パッケージ化して、毎回簡単に展示できたり、簡単にライブができたりするものだと、本当にものすごくスムーズに終わるんですが、こっちが学習するものがない。

—あえてハードルを高くすることも?

 大きい舞台になればなるほど、どんどんハードルを下げてリスクを減らそうとしがちですが、やっぱり一番ギリギリのところに設定したほうがいい、というのはあります。

 たとえば今回のフラッグハンドオーバーのパフォーマンスでは、総合演出を担当したMIKIKOさんが、ダンサーにフレームを使わせるというアイデアを出したのですが、本番まで現場でフレームと映像を一緒にテストすることができないので、ちょっと難易度が高すぎると僕は思ったんです。だから、「映像だけにしたほうがいいんじゃない?」と言ったんですが、MIKIKOさんは、「いや、でも難しくしたほうが絶対面白いこと出てくるから」って。僕一人、最後まで反対したんですけどMIKIKOさんの意思は強かったです(笑)。

 でも結局、そのおかげで今までやったことのない思考が出てきたんです。

—あれだけの注目度のなかで、失敗なんてしたくないですよね。どんな失敗のリスクがあったんでしょう?

 たとえば、プロジェクションの精度はそれほど高くできないと、最初から言われていたんです。日本だったらフィールドに投影するとなってもおそらく10センチ以内の誤差にできる。でも、リオの現場では、最悪の場合、数メートルずれることもあると言われたんです。そうなると、あまり緻密な演出ができなくなってしまう。

 あと、AR(拡張現実)でCG合成する演出もあったんですが、カメラの位置とアングルがぴったり合っていないと実現できない。でも、本番直前までカメラの位置がわからないです、と言われていて。

 リスクのことだけを考えると、それならやめておこうという話になりますよね。でも、ちょっとずれていても、それを補正するソフトを作ればなんとかなるんじゃないかと。ダンサーが練習したらなんとかなるんじゃないかと。常に可能性を探し求めていき、最終的には、ダンサーの訓練で解決しつつ、補正するソフトを作ったことで、新しいエフェクトが生まれました。

頼まれたこと以上の何かを、一つ加える

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vaxelf51 スパルタ先生www>「映像だけにしたほうがいいんじゃない?」と言ったんですがMIKIKOさんは「いや、でも難しくしたほうが絶対面白いこと出てくるから」って。僕一人、最後まで反対したんですけどMIKIKOさんの意思は強かったです(笑)>https://t.co/tQnhy50UyV 1年以上前 replyretweetfavorite

yaiask 真鍋大度さんによる、リオ五輪閉会式演出の舞台裏話 1年以上前 replyretweetfavorite

hiro88x |規格ハズレの履歴書たち|Tokyo Work Design Week|cakes(ケイクス) https://t.co/lb2CgcyGAj 1年以上前 replyretweetfavorite