フランス語の「恋」と「愛」の違い

愛する人についていき、フランスに三年間暮らしていた牧村さん。母国語ではないフランス語の言葉のニュアンスを難しく感じることもあったそうです。今回は、フランス人の友達と「恋」と「愛」の話になった時に感じたフランス語と日本語の言葉の違いについて取り上げます。フランス語の「恋」と「愛」、そして日本語の「恋」と「愛」は、それぞれどのような意味を持っているのでしょうか。

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日本語の「恋」も「愛」も、あなたの国の言葉ではみんな「アムール」の一言でまとめられちゃうのね、って、フランスから来た愛しい人に、さめざめ泣いたことがある。

私は、フランス語があまりできない。フランスから来た人を大好きになって、フランスについていって3年間暮らしたので、言うなれば、私のフランス語は3歳児レベルのものだと思っている。そういうたどたどしいフランス語で、日本語を母語とする人が誰もまわりにいない中を暮らしていると、時折、すごく孤独になった。勝手に。

もちろん、努力して言葉を覚えていくことはできる。フランス語も日本語も、同じ人間の話す言葉である。だけれども、背景としている社会文化が違うので、たまに、どうしても翻訳のむずかしいことが喉の奥でわだかまってしまう。その時の私は、フランス人の友だち・アンリに、フランス語で、こんなことを言ってもらっていたと思う。

「泣かないでよ。君は見返りを求めているだけでしょう。自分がアムール(愛)しているのに、相手から望みどおりのアムールが返ってこないから泣いているだけでしょう」

私は言い返した。

「違うのよ。私の国、日本の言葉では、見返りを求めるような気持ちをアムールとは呼ばないの。それはコイ(恋)と呼ばれるものなの。アムール(愛)として花開く前の、未熟なつぼみにすぎないものよ」

アンリは口の中で、コイ、と繰り返した。

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牧村朝子

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コメント

nemo117 https://t.co/Ia7hQlhylW 10ヶ月前 replyretweetfavorite

s_yut フランス語では、恋は状態、愛は動詞、恋から愛になって初めて「愛する」と言える、ねえ。ふぇぇ 10ヶ月前 replyretweetfavorite

raichi_sasabi フランス語も恋愛も難しいなぁ 10ヶ月前 replyretweetfavorite

cpiiciva 一度読んだだけではわからなくて、もう一度ゆっくり読んで少し理解した。言語としてとても興味深いし、哲学的な問答だね。 10ヶ月前 replyretweetfavorite