『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』2,296円(税抜)Playstation VR専用
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
■魂の声
バンダイナムコエンターテインメントの本社ビルに絶叫が響いた。
「Fu! Fuuuuu!!」
フロア全体に轟く男の魂の声であった。男の体は、小さな部屋に据え置かれた椅子の上にあるが、意識は既にここにはない。
「イェエエエッ!」
男の肩が叩かれた。誰が叩いたのであろう。後ろにいる客だろうか。自分は今、ステージを見ている。大勢の観客の中、コンサートライトの光の中で、アイドル達を応援している。ここだけが現実だ。
「柴田さん、柴田さん」
そのとき頭につけていたヘッドフォンが外され、もう1つの重ね合わさった世界に聴覚だけが接続された。
「すいません、コールがかなり響いてるので、少しだけ静かに……」
「あっ、すいません」
現実であった。
自分が今見ている風景こそが、VRの世界だと、この時になって気づけた。担当の人がヘッドフォンとPS VRを取り外し、視界が現実に戻る。目の前のテレビではアイドルが表示され、手にしていたコンサートライトもPlayStation®Moveとなり、自分が座っていたライブ会場の椅子も、もはや普通のものとなった。
(あ、これ『トータル・リコール』で見たやつだ!)
ワシはここに来てようやく、自分がVRゲームを体験するために、バンダイナムコエンターテインメントに来ているのだと思い出したのだった。
柴田勝家(しばた・かついえ)1987年生れ。SF作家。
■SF作家歴よりもP歴の方がちょっと長いワシ
言わずもがな『アイドルマスター』(以下アイマス)といえば、プレイヤーがプロデューサー(以下P)となり、個性溢れるアイドル達との交流を深め、多彩な楽曲に触れるゲームである。ゲーム以外にもCD、ラジオ、ライブ、アニメなど複数のメディアで展開し、それぞれ魅力的な音楽で楽しませてくれる。その派生作品である『アイドルマスター シンデレラガールズ』もまた、ソーシャルゲームとして出発しながら、CD化、ライブ、さらにアニメ化も果たし、いわゆるアイマス一門の一角を担っている。本作は本家アイマスよりも数多く多彩な(現在は200人近くの)アイドルがいることが特徴であり、それぞれのアイドルの魅力を各地で担当P達が熱弁している。ちなみにワシは成宮由愛ちゃんの担当Pです。
それはそれとして、今回、そのアイドルのライブをVR上で楽しむという『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』なるゲームが発売された。そしてワシもまた、VR特集に合わせ、実際にこれを体験し、記事にする機会を頂いた。
このゲームは『シンデレラガールズ』に登場するアイドルの3Dモデルによるライブを、プレイヤーはVRを用い、観客となって楽しむというものらしい。それが実際にどのようなもので、どのようなことになったのか。SF作家歴よりもP歴の方がちょっと長いワシが、以下に体験した全てを書き記そうと思う。
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