内田明理インタビュウ(後)ときめきの、さらに向こう側へ。

『ラブプラス』『ときめきメモリアルGirl's Side』など数々のヒット作を生み出してきたゲームデザイナー・内田明理氏へのインタビュウ後篇です。氏が現在手がけているプロジェクト「AR performers」を通して、AR、VRの未来について語っていただきました。本インタビュウはSFマガジン2016年12月号(10月25日発売号)に収録されています。

──前篇に引き続き、「AR performers」についてお伺いします。ちなみに、シンジを動かしている“チームシンジ”は、何人くらいいらっしゃるのでしょうか。

内田 どこまで入れるかという問題もあるんですが、リアルタイムで動いているのは三・五人くらいですね。

──意外と少ないんですね!

内田 全部手で動かしているわけではなく、自動化されているところもたくさんあるので。そこは営業をしておきますと、ユークスのリアルタイムレンダリング(*5)の技術なんですよ(笑)。

(*5)リアルタイムレンダリング:リアルタイムで画像・映像・音声などを生成するシステム。ARPではユークス社の内制エンジンにより、高いクオリティでの表現が実現されている。

そのオペレーターと、声を出してくださるかたと、身体を動かしてくださるかた、知恵袋的・舞台監督的に動く僕、という。リアルタイムで駆動していないチームメンバーは、モデルだったり、衣装のデザイナーだったり、振り付け師の先生だったりとか。

──その集大成としてシンジがいるということなんですね。そのような最新鋭の技術でパフォーマンスをしていると、当然ながら演出的・技術的な苦労が出てくるのではと思いますが。

内田 僕はどちらかというと「あれやって、これやって」というばかりの立場なのですが(笑)。それでもやっぱりリアルタイム演算での衣裳の動きとかは難しいですね。実際の現実のシミュレーションのままだと、見た目が地味になっちゃうので、どこまで派手に盛って動かすかとか、そういうことはけっこう試行錯誤しながら調整をしています。もちろん、シンジたちの動き自体も、実際の人間の動きのままでは、着ぐるみみたいになってしまってちょっと気持ち悪いんですよね。そういうところに対して、微細なモーションのブレをプログラムでコントロールしていたり、動きを調整するものを入れてみたり、演者さんの方にもちょっとした身のこなしとかのルールづけをお願いしてみたり、2Dのキャラクターの人間離れした体格を自然に見えるようにするというのは、苦労していますね。やってみるとわかるんですが、単純にリアルタイムで動かすだけではキワモノになっちゃうんです。気持ち悪い感じになってしまう。そういうことが起こらないように技術的なこと、演出的なことで調整をしています。

βライブでのシンジ

──キャラクターの手の長さ、足の長さは実際の人間と比べると違和感を覚えるものですが、動いているとそれがとてもかっこよく見えます。

内田 そこは試行錯誤の末なので、そう思っていただけると嬉しいですね。リアルのまま動かしてしまうと、リアルじゃない部分が目立って気持ち悪くなってしまう。2Dキャラクターならではの外連味(けれんみ)を芝居に反映していかなければならないんですね。そういうところがデジタル制御と演出の工夫のしどころでもあるなと思います。技術と、チームシンジの面々の熟練度みたいなところが混ぜ合わさってよくなっていく。実際、リハーサルを重ねるたびにどんどんよくなっていくんですよ。それがすごいなぁと、やっていておもしろかったですね。醍醐味だなと思いました。

βライブでのREBEL CROSS。
背後には観客からの応援コメントが浮かんでいる

──内田さんのこれまで作られてきたキャラクターは、通り一遍の個性を持つようなキャラクターではなく「ひとりの人間」という印象がとても強かったです。「キャラクターではなく、「ひとりの人間をつくりあげること」ということが、今回ARPで進化形となってあらわれたのではないかと思いますが。

内田 自分の得意なところとやりたいところというのをシンプルに考えていくと、こういうことだな、と集大成のつもりでやっています。これまでは自分の書いた本の通りにしゃべっていたキャラクターだったのが、僕が言ってほしくないことを言い出すかもしれないんですよね。ステージの上がすべてなので。彼らがもしかすると、「それ言うなよ!」というようなことを言い出すかもしれない。まさにタレントさんと仕事をしているような醍醐味がありますね。僕も彼らがこれからどうなっていくのか、本当に楽しみなんですよ。

──つくりあげていくなかで、意識されるのはやはり、「ひとりの人間」という。

内田 そうですね。これまではキャラクターが自分の頭の中から出てきた言動、つまり計画したことだけをしていたわけですが、ARPについてはキャラクターと一緒に成長していける、キャラクターたちが育っていくところに立ち会える。そこが面白いと思います。

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『ラブプラス』『ときめきメモリアルGirl's Side』シリーズで、日本中をときめかせ続けてきたゲームクリエイター・内田明理氏。氏がいま手がけているプロジェクト「AR performers」について、ARとVRの未来について、縦横無...もっと読む

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コメント

sougetsu_nov #AR_BOYS の理念や技術的なものに関してはこの記事も面白いですよ 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

yukes_official 「『シンジ』は何人で動かしているのか?」「実際の人間の動きのままでは、着ぐるみみたいで気持ち悪い」 #AR_BOYS 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

gonkb https://t.co/9oN3H8ng6K 4ヶ月前 replyretweetfavorite

koma_goo 枠にはまった計画的に作られたキャラクターではなく、ステージ上でひとりの人間としてキャラクターたちが育っていく。これがリアルタイムライブ 4ヶ月前 replyretweetfavorite