内田明理インタビュウ(前)国民の「お義父さん」の新たなる挑戦。

『ラブプラス』『ときめきメモリアルGirl's Side』など数々のヒット作を生み出し、「お義父さん」「内P」と、ユーザーから熱烈に愛されてきたゲームデザイナー・内田明理氏。氏が現在手がけているプロジェクト「AR performers」の現在からAR、VRの未来にいたるまでうかがったインタビュウの前篇を再録します。本インタビュウはSFマガジン2016年12月号(10月25日発売号)に収録します。

■現実とヴァーチャルを混ぜること

──「AR performers」(以下、ARP)以前にも、内田さんの作られてきたゲームでは『ラブプラス』でのRTC(リアルタイムクロック)システム(*1)、『ときめきメモリアルGirl's Side』での「ボーイズルーム」など、現実とリンクしたシステムへの志向がおありだったのではと思います。最初に「現実とゲームをリンクさせること」を意識されたのは、なにがきっかけだったのでしょうか。

(*1)RTCシステム:現実の季節や時間と連動してゲーム内の世界が変化していくシステム。

内田 ゲーム内の時間と現実の時間を仕掛けとしてリンクさせようと思ったきっかけは、おそらく《とんがりボウシ》シリーズなんですが、その以前からずっと、自分と同一の地平にいてくれるような存在をつくりたいということを考えていたようなところがあります。自分の生活とダブってくる面白さということで、RTCにトライしたということもありますね。『ラブプラス』でも、自分の言動によってキャラクターが自分の好みになったり、ならなかったり変化してくるというシステムを採用しましたが、やはり自分と同一地平上にいてほしいというような、そういう願いが昔からありました。

──そういったこれまでのゲームは画面の中で完結するものだったと思いますが、このたびARPを立ち上げるにあたって、ARというジャンルを選ばれたのはなぜなのでしょうか。

内田 ARという言葉が世の中で広く使われ始めたのは六、七年くらい前かと思うんですが、国内で最初に具体的に登場したのは「セカイカメラ(*2)」だと思うんですね。

(*2)セカイカメラ:2008年に公開された、スマートフォン上で動作するソフトウェア。アプリを起動すると、カメラで映し出された目の前の建物などに「エアタグ」と呼ばれる情報が表示される。

実際の空間のなかに必要なだけヴァーチャルなものを置いてしまうという手法を見て、「この手があったか!」というような衝撃がありました。そういう手法は、ゲーム内ではなかなか実現しづらかったんですが、ゲームの外、たとえばプロモーションの施策などでやってみたりと、それから頻繁に試すようになっていったんです。

 元々、ゲームをプレイしていただいたときに、お話のなかだけのことにしないで、プレイヤーさんの経験として記憶に残したいというもくろみが昔からありました。ゲームの中に実際の風景や時間を取り入れて、ゲームのハードを持って同じ時間に現地に行ってプレイをするというような試み(*3)をやったりもしたのですが、そうするとゲームの中では描ききれない風の音や匂いとか、そういったものが記憶には補完されるわけですよね。

(*3)ゲームのハードを持って同じ時間に現地に行ってプレイをするというような試み:2010年の夏に開催されたイベント『熱海ラブプラス現象(まつり)』。市内の一部店舗・施設に『ラブプラス+』とDSを持ち込んで利用すると特典が受けられる、ARマーカーが市内各地に設置されておりヒロインと写真が撮れるなど、画期的なイベントだった。

なんとか、現実の経験とヴァーチャルのストーリーやキャラクターを混ぜてしまって、お客様の脳みその中の特殊な場所に収められないかなと思っていました。そういうことを考えたとき、ARというのは面白い手法だなと思いましたし、直感的に自分が欲していることに近いな、と思いました。その延長でARPをやっている感じですね。

—ARPは、今まで手がけられてきたソフトではなく、ライブをメインとしたコンテンツですね。

内田 以前ときメモGSで「デートに行こう!(*4)」というイベントをおこなったんですが、あれもただ映像を見ておしまい、というようなものにしたくはなかったんですよね。

(*4)「デートに行こう!」:2013年3月に開催された『ときメモGS』シリーズのイベント。画面に映し出されるキャラクターとデートしながら、出現する三択を観客が選び、それによって物語が展開していくというスタイルだった。

「デートに行こう!」は、キャラクターとデートに行くという、いわばごっこ遊びから始まって、そこでお客さんに三択のなかからキャラクターの行動を決めてもらって、一期一会の体験をしていただいた。そのとき、その部分に対して、お客さんから大きな反応をいただけて、「やってよかった!」と思いました。その頃から、架空のキャラクターとの、映像の再生ではない一期一会の体験をどうすれば実現できるかと考えていました。僕は2Dのキャラクターを今まで手がけてきて、そこについてはそこそこ評価をいただいていたんですけれども、その2Dのキャラクターを軸に、一期一会の体験を提供することに特化してなにをやるべきなのかということを考えたときに、ステージで大勢のお客さんとキャラクターたちが生で空間を共有してもらうことができそうだと思ったんです。ですが、コストもかかりますし、なかなか会社の経営陣に理解していただくのは難しくて。でも、何とかしたかった。いわゆる二次元のキャラクターだからこそ、実際のタレントさんではできないこともいっぱいある。そういう意味では、単純に現実を模倣するのではなくて、2Dの世界じゃないとできないことを現実空間でやるということによって新しいエンターテイメントの道になるのではないかなと思っていましたから。

■ARで「ひとりの人間」をつくる

──ARPでは、お披露目ということで四月にβライブステージが開催され、シンジと、レイジ&ダイヤからなるユニット「REBEL CROSS」がパフォーマンスをおこない、大成功のうちに終了しました。

2016年4月にベルサール秋葉原にて行われた、ARPのベータ版ライブ。
シンジとREBEL CROSSという二組のパフォーマーが対決した。
スマホの応援アプリを使って、コメントを投げたり、花火を出したりといったステージ演出に入っていけるシステムを採用。
観客の行動によって、最終的に応援ポイント数が高かったアーティストを勝利とした。

シンジはARPの最初のアーティスト。優雅でスタイリッシュなパフォーマンスが得意。

REBEL CROSSはレイジとダイヤ、男性二人からなるユニット。クールかつロックなパフォーマンスが身上。

—少々テクニカルなことをうかがいたく存じます。あれは実際に人が後ろで動いているのでしょうか?

内田 はい。簡単に言うと、人形浄瑠璃なんですよ。いろいろな人がいて、表情を動かす人、身体を動かす人、声を入れる人、ダンスを踊る人がいる。何人かでひとりのキャラクターをつくりあげているんです。

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内田明理インタビュウ

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『ラブプラス』『ときめきメモリアルGirl's Side』シリーズで、日本中をときめかせ続けてきたゲームクリエイター・内田明理氏。氏がいま手がけているプロジェクト「AR performers」について、ARとVRの未来について、縦横無...もっと読む

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コメント

sougetsu_nov こちらのインタビューで内Pが仰ってる「何人かでひとりのキャラクターをつくり上げている人形浄瑠璃」という説明が一番、ARPと他の2.5次元ヴァーチャルアイドルとの差がでている部分かもしれません。「中の人」は黒子に徹してる。 https://t.co/MZOVXGKjGd 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

sougetsu_nov https://t.co/MZOVXGKjGd https://t.co/JB4ElG9Znf 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

ayutarin https://t.co/SFJumjIFJY 4ヶ月前 replyretweetfavorite

hitsujin0v0 そういえば私がARPに興味持ったきっかけの記事これです(会員登録しないと途中までしか読めないけど… 4ヶ月前 replyretweetfavorite