「経歴作り」のための読書からスタート
—— 『文豪失格』の作中には、たくさんの文学者や作品が登場します。そのような文学作品には、昔から親しみがあったのですか?
千船翔子(以下、千船) いや、実はぜんぜん……(笑)。小学生のときから、図書室にはよく行っていたんですが、その理由が、「本をたくさん借りてる人ランキング」に入りたかったから。全校集会で毎月、発表されるんですよね。だから、そのランキングに入りたくて、毎日本を借りに行っていました。でも、ランキングに入りたいだけなので、読まないで返したものも多い(笑)。
—— どのような本を借りていたのですか?
千船 江戸川乱歩はよく借りていました。表紙が怖そうだったので、刺激がありそうだから、っていう理由で。あと、伝記ですね! 伝記はたくさん読んでました。野口英世とか、ガンジーとか、マザーテレサとか……有名どころは全部読みましたね。
—— 相当お好きだったのですね。
千船 そのころから、歴史はすごく好きでした。当時、学級新聞の新聞係だったんですけど、「歴史コーナー」っていうのを作って、自分で歴史のことを調べて記事を書いていたんですよ。文章が基本だったけど、イラストも描いてました。そのときハマっていたのは、源氏と平氏。でも、周りからは「マニアックすぎる」って言われて評判はよくなかった(笑)。
『文豪失格』(実業之日本社)より。以下同様
—— 小さいころは、純文学ではなく歴史モノに夢中だった。
千船 ……正直に言うと、『文豪失格』を描くまで、文豪とか純文学には疎かったんですよ。個人でずっと歴史のブログをやっていたら、それを見た出版社の方から、「明治時代の歴史モノを描いてほしい」って声をかけていただいて。だけど「文豪モノ」って話はいっさい聞いてなかった(笑)。出版社に行って初めて、文豪漫画を描いてほしいと頼まれて、びっくりした。なぜ私なのだろう、と……。
—— 担当編集者の方によると、「これだけ幅広い歴史が好きな方だから、きっと文豪にもハマってくれるだろう」と思われたのと、何より千船さんの圧倒的なギャグセンスに魅力を感じられていたとか。
千船 歴史は好きなんですが、文豪は私にとって、新境地だったんですよね。なので、私には力量不足だろうと思い、最初は、お断りしようとも考えました。実際編集さんは、文豪モノと言ったら、断られるだろうと思い、あえて言わなかったのだそうです(笑)。
—— それでも、『文豪失格』はもちろん、Twitterで呟かれている豆知識などを拝見していると、文豪への造詣がとても深いように感じます。そのような知識はどのように得られたのですか?
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