大好きな両親との戦い
私の家は、父、母、弟、私の4人家族だ。
父は曲がったことが大嫌いで頑固だけど、いつも正しい。私がテストでいい点数を取ったときは遊園地に連れて行ってくれ、マラソン大会で上位に入ったときは思いっきり褒めて私の大好きなお寿司をとってくれた。
母は穏やかで優しくていつも一番に私のことを考えてくれる。私が友人と喧嘩したときはずっと話を聞いてくれたし、困ったときはいつも助けてくれた。
「優しい人と結婚してね。そっくりな子供が生まれるといいね」
「どんな仕事に就くのかな~」
「孫の顔を見るのが楽しみ」
父と母は私の将来をすごく楽しみにしていた。
私は両親が大好きで大切だ。
だから、整形したいという気持ちが芽生えたとき、両親に対してなんて言おうかすごく悩んだ。「整形したい」なんて言えない。絶対に言えない。悲しませたくない。ものすごく怒られるかもしれない。でも、言わなきゃ。
やっぱり無理だ。
明日こそ言おう。
だめだ。いっそ、なにも言わずに整形してしまおうか。
そんなふうに心が揺れ動く毎日だった。
整形は親不孝?
「親からもらった体にメスを入れるなんて親不孝だ」と言う人がいる。けれど私は「見た目のコンプレックスから自分に自信が持てず、うつむいて生きる方がよっぽど親不孝だ」と思う。一度きりの人生、後悔したくない。
私の整形したい気持ちはピークに達していた。
「お父さん、お母さん、私……整形したい!」
ついに父と母に打ち明けた。
父は怒っていた。母は泣いていた。こうなることはわかっていたのに、実際その時になってみると想像以上に辛かった。
両親は口を揃えて言った。
「充分可愛い、整形なんて必要ない」
私が欲しいのはそんな気休めの言葉じゃなかった。何年か生きていれば、自分の見た目がどのぐらいのレベルなのかわかってくる。私は不細工だ。
母は、私が「可愛い」という言葉に聞く耳を持たないとわかると、「整形に失敗することもあるのよ」と心配するようになった。
わかっている。ネットで「整形 失敗」で検索すると、思わず目を背けたくなるような記事がたくさんでてくる。怖い。でもそれ以上にこの顔で一生生きていくことのほうが怖かった。
そんな私の気持ちを伝えても、両親はなかなか首を縦に振ってくれなかった。当然だと思う。
「お母さんとそっくりだね」
昔からいろんな人に言われてきた。
その度に母はすこし照れたような、だけどすごく嬉しそうな表情で笑っていたことを思い出す。
顔を変えたいと言うことは母のことを否定することになってしまう気がして、罪悪感や悔しさやいろいろな感情が入り乱れ、数日間はまともに眠れなかった。
それでも毎日自分の気持ちを伝え、決して諦めなかった。
「そんなに言うなら」
半年以上かかったが、この言葉をもらえたときは死ぬほど嬉しかった。
顔の変化に強く反応したおばあちゃん
今では両親とも整形を受け入れてくれ、「お母さんも整形しちゃおうかしら」と言ってくれるまでになった。
自分の子供が「整形したい」と言って悲しまない親なんていないことはわかっている。大切なのは、悲しませた分もっともっと両親を大切にしてたくさん喜ばせて親孝行することだと思う。
私は整形してから、休日親と過ごす時間を増やしたり、家事を積極的にやったり、とにかく親孝行に励んだ。
整形前よりも両親との絆は深まったと思う。
親戚に対しては、整形することは言わなかった。私の家族は毎年、お正月やお盆に親戚や従姉妹などとみんなで祖母の家にあつまっていた。小さい頃からの恒例行事なので、「整形したから行きたくない」などワガママを言えるわけもなく、整形後もなに食わぬ顔をして参加した。
いとこたちは、顔のことは全く触れず、いつも通りに接してくれた。「雰囲気変わって綺麗になったね」と言ってくれる親戚もいた。
そんな中、唯一私の顔の変化に強く反応したのはおばあちゃんだった。
「鼻が高くなったねぇ。かっこいい鼻だね」
「ぱっちりな二重になって、かわいいねぇ」
美容整形の存在自体を知ってるのかどうかもわからないが、おばあちゃんは私の顔が変わるたびに褒めてくれた。それがなんだか嬉しくて、少し恥ずかしかったのを覚えている。
おばあちゃんは亡くなってしまい、今ではもうみんなで集まることもなくなったけれど、 あのとき、誰も美容整形のことを否定せずに温かく受け入れてくれたおかげで、すごく救われた。
クラスメイトにバレるのは覚悟の上だった
整形前、仲の良かった友人数人には「整形しようと思ってる」と打ち明けた。「やめなよ」「しないほうがいいよ」と否定的なことを言う友人は一人もおらず、「いいな~、私もしたい」「化粧も楽になるし、いいね!」とみんな賛成してくれて背中を押してくれた。
学校ではメイク禁止だったし、どう足掻いても誤魔化せそうになかったので、クラスメイトにはバレるのを覚悟で整形した。「卒業してから整形すればいいのに」と思う人もいるかもしれないが、私は一刻もはやく整形したくて、いてもたってもいられなかったのだ。
そして、夏休みに整形した。新学期が始まり、整形後初めて学校に行くときは、不安で足がすくんだ。でも、そんな不安は教室に入った途端に消えた。