畑も人生もドロ沼で、もう家庭菜園なんてやめる!

貸し農園のおじさんたちとの関係もとりあえずは良好で、順調に滑り出したように見えた金田さんの家庭菜園。しかしここへきて、とんでもないトラブルが夫婦を襲います。大自然の驚異に打ち勝つことはできるのでしょうか!?

畑にできたグランドキャニオン!?

野菜の植えつけにむけて畑を耕していたころ。長雨のあとに、農園でトラブルが発生した。

「ちょっと掘るだけで、水が出てきちゃうんですよ」

水道に手を洗いにきたおじさんは、ドロだらけだ。

「水が出た? 湧き水ってことですか?」と夫が聞く。

「そうなんです。とりあえず溝を掘って、そこに水を逃がしているんだけど……」

苦笑するおじさんについて、私たちはその畑を見に行った。

「わっ、ほんとだ」

地面のあちこちから水が湧き出している。

おまけに畑の真ん中には、何やらヘビがはったような跡があり、そこだけ土が陥没していた。

「まるでグランドキャニオンだな」と夫がつぶやく。

「は?」

「グランドキャニオンって、コロラド川に削られてできた地形でしょ。この畑にも、蛇行して水が流れてるんだよ。その水で土が削られて、地面が陥没してるわけ。わかる?」

夫はえらそうに解説した。


おじさんの畑の写真は気の毒で撮れなかったので、グランドキャニオンのイメージ画像をお楽しみください。


「で、あそこがガクンとくずれて、ナイアガラの滝だ」

おじさんの掘った溝に川がぶつかり、溝に向かって水が流れ出ている場所を、夫は指さした。

「なんでグランドキャニオンにナイアガラの滝がつくの?」

グランドキャニオンはアメリカのアリゾナ州にあるが、ナイアガラの滝はカナダ国境だぞ。


せっかくなので、ナイアガラの滝の画像もお楽しみください。

夫はそれにはこたえず、さらにえらそうに解説を続けた。

「農園全体が、この一角へ向かって坂になっているだろ? 雨水が地中を低いほうへ流れて、ここに集まって出てきちゃったんだ」

たしかに、農園はゆるやかな斜面になっている。私の畑は、水が出ちゃったおじさんの畑よりは高い位置にあるが、それでも農園全体から見れば下のほうだ。

「うちは大丈夫かな?」

「今のところはね」

それにしても、この区画のおじさんはすごい。まったくめげずに微笑みながら、溝をつくるという策を考えつくなんて。私なら泣いてやめてるよ。

「がんばってくださ~い」

私たちはおじさんに声援を送ると、さっさと自分たちの畑へ戻っていった。


もはやこれは畑じゃない

それからちょうどひと月後。私は「畑なんかやめる!」と泣いていた。

出ちゃったのである。わが畑にも湧水が。

それは、数日降り続いた大雨が上がった日だった。ひとりで畑へ行くと、お隣のO野さんがドロだらけで立ちつくしていたのだ。

クワでもスコップでもなく、なぜかハンマーと太い釘を持っている。

「出ちゃったよ、うちにも水が。おたくはどう?」

あわてて長靴にはきかえ畑に入ると、

ずぼっ。ずぼ ずぼっ。

「うわっ、足が埋まる!」


2万円近くしたエーグルのブーツが……。涙

シャベルで掘ってみたら、

「出ました、水。ドロドロです……」

もはやこれは畑じゃない。沼だ。

「どうすればいいんですかっ!」

私はO野さんに泣きついた。野菜作りの知識もないが、水トラブルの知識なんて、もっとない。

「溝を掘るしかないね。そこに集めた水を側溝に逃がそうと思って。側溝のつなぎ目に穴をあけようとしてたんだ……」

O野さんはハンマーと釘を持ち上げて悲しそうに笑った。

(よし、溝だな。作ったことないけど、やるしかない)

私はO野さんにならって、畑を掘りはじめた。


<こんな感じで溝を掘り、水を逃がす計画です>

シャベルをつきさす先から、地下水がわいて出る。

(これが原油だったら、大金持ちになれるのにな……)

いや、その原油は農園主のものか。石油王になるのは畑の大家さんで、私じゃない。そう思ったら、ますます悲しくなってくる。


人生初めて掘った溝。ここが畑とは思えません。涙

畑も人生もドロ沼だよ
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シロウト夫婦のズボラ菜園記

金田 妙

毎日、採れたての新鮮な野菜が食卓にのぼる。そんな生活に憧れる人は多いのではないでしょうか。自分で野菜を作れればよいけれど、畑はないし、仕事は忙しいし、週末は遊びたいし…。それでも、思いきって家庭菜園の世界に飛びこんでみたら、おもしろい...もっと読む

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