先日、日本に帰国中、ニューヨークを活動基盤にする文芸エージェントの大原ケイさんから「ねえ、大統領選についておしゃべりイベントしない?」というお誘いがあり、今年の大統領選挙について東京でトークイベントを行いました。そのハイライトをお届けします。
どちらが本選を勝つのか
大原ケイ(以下、大原) 私と由佳里さんは、ふだんは洋書のおしゃべりをしているんですが、今回は、8週後に控えた11月8日の大統領選についてお話します。
渡辺由佳里(以下、渡辺) もう8週後ですか? 今日何日か覚えてないんですけど(笑)。
会場 9月13日です。
渡辺 ありがとうございます。日本に来ると忙しくて日付がわからなくなる(笑)。
大原 おしゃべりの前にちょっとおさらいしますね。アメリカの大統領選は国民一人ひとりの投票が直接反映する「直接選挙」と思われてますが、そうじゃなくて、「選挙人」っていう役割の人が各州にいてその人が代表して投票します。選挙人の数は全部で538人なので、270取ったほうが勝ちです。
「選挙人」の数はその州の人口から割り出した下院議員の数と上院議員(各州2人)を合わせた数で決まっています。一番少ないのがハワイやアラスカなど人口が少ない州の3人で、一番多いのがカリフォルニアの55人。
そして、どんなに僅差であっても、州で一番票の多かった人が「選挙人」総取りです。(メインととネブラスカは例外)この選挙人を駒のように取っていくのが大統領選挙なんですが、私が住んでいるニューヨークは青い州なので、誰も選挙運動には来ないし、テレビコマーシャルも流れない。民主党の候補が勝つと決まっているからです。
渡辺 いま、「青い州」という表現が出ましたが、民主党は青、共和党は赤という色分けになっているんです。「青い州」は民主党よりの州で、「赤い州」は共和党よりの州です。
そこで、大統領選挙で注目されるのが、青でも赤でもない、その中間の「紫の州」ということになります。
大原 これまで、共和党候補も民主党候補も選んできた「スイング・ステート」と呼ばれる州です。
渡辺 たとえば、オハイオ、フロリダ、コロラド、ペンシルバニア、ノースキャロライナ、ニューハンプシャー、アイオワなどですね。
大原 それらの州は両候補にとって戦場なので、CMもガンガン流れるし、家にいるとドアをノックして、「もう選挙登録しましたか?」ってやってくる。
大原 今の情勢ではヒラリーはすでに222票確保していて、フロリダ取ってペンシルバニア取っちゃえば、もう過半数(270)いく計算です。
会場 今回は落とさないと思うんだけどね~。
渡辺 いや、フロリダはけっこう微妙なんですよ。
大いなるねじれを利用する形で現れたトランプ
渡辺 フロリダ以外の州では、ヒラリーはヒスパニック系の支持が強いのですが、フロリダのヒスパニック系はキューバからの移民が多く、彼らは歴史的に保守で共和党なんです。理由はJFKの時代にさかのぼるのですが。実際に、現在はトランプがリードしている状態です。
そのうえ、今回の選挙は、すべてがこれまでとまったく違う感じです。
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