アドベンチャー的に楽しむ (シャムキャッツ インタビュー後編)

さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回はシャムキャッツの夏目知幸さん、菅原慎一さんに登場して頂きました。インタビュー前編に続いて、後編をお届けします。

インタビュー前半では夏目知幸(Vo, Gt)のアイデアの源流となる本を紹介したが、後半では菅原慎一(Gt, Vo)の思想、音楽観に影響を与えた本を紹介する。さらに終盤では、2人のバンドへの想いも伺った。

世界の見方を変えてくれる役割。それを担っているのが、本だと思う(菅原)

— 次は菅原さんです。

菅原慎一(以下、菅原) ちょっと夏目の紹介の仕方と違う角度なんですけど、今の自分を構成する5冊を紹介します。まずは『冒険図鑑』。

夏目知幸(以下、夏目) 学校の図書館とかにあるよね。

菅原 小学校低学年の時に新品で買ってもらったんですけど、ずーっと肌身離さないでいるんです。この本、20年くらい持ってます。

夏目 菅原の部屋にあった記憶ある。

— これは菅原さんにとってどんな本なんですか?

菅原 僕、本はもともと好きなんですけど、本を読む時って、1ページ目から最後までを堪能して浸るというよりは、パラパラめくったりして楽しむんですね。大げさに言うと本って、その存在が自分の世界の見方をちょっと変えてくれる、みたいな役割を持ってるもので。

夏目 たしかに。

菅原 この本は僕にかなり影響を与えてるんです。野外で生活するために—っていうコンセプトの本なんですけど、これを家で読みながら遠い世界に思いを馳せてたんですよね。僕は夏目と同じ浦安の団地出身なんですけど、遊ぶ場所といっても、団地内の公園か、ちょっと足を伸ばして東京ディズニーランドくらいで。山があって川が流れてっていう自然のある環境が本当になかったんですね。しかも僕は父方、母方の祖父・祖母の家も東京近郊だったから、ほんと自然に憧れてたんです。これを読んでいろいろ想像してました。

— 実際に試したりとかは?

菅原 あ、試したことあります。紐の結び方とかは家でやってました。

— そっか、家でできますよね(笑)。セカンド・アルバムは『たからじま』ってタイトルですし、そういう冒険的な要素は音楽にも反映されているかもしれないですね。

菅原 そうです。シャムキャッツにアドベンチャー系の要素はあると思ってます。

— 次は『世界の国歌全集』です。

菅原 この本は世界各国の国歌が楽譜付きで載ってるんです。地球儀とかをグルグル回して見るのって楽しいじゃないですか。それと同じ感覚で読んでました。ピアノは得意ではないけど、鍵盤でちょっと弾いて、こんな国があって、こんな歌が歌われてるんだっていうのを想像してましたね。僕の音楽感のルーツにあるものだと思います。

夏目 面白いよね、国歌。スペインの国歌ってさ、歌がないんだよね。歌詞がついてない。

— へえ!

菅原 当たり前のように、それぞれの国に国歌があるのって面白いなって思います。

— 次は『東京繁昌記』です。

菅原 大正から昭和にかけて活躍した洋画家の木村(荘八)さんっていう人が、自分の親しんだ東京の下町の景色をエッセイみたいな形で新聞に寄稿してて、それをまとめた本です。舞台は東京なんですけど、これもアドベンチャー的なものに似ているんです。自分の生活してる土地の、昔の景色をイメージするのって凄い冒険じゃないですか。ここは残ってるなとか、ここはすごく変わったなとか、そういう差異を楽しむ。僕はこの本をそうやって読んでるんですけど、おそらく木村さんもそういう見方で書いてる。変わってしまった景色に対しても、ぜんぜん悲しんでないんですよね。それが面白くて。楽しみつつ、淡々と書いてるんです。“銀座っていうものはすごい近くにあるけど、やっぱり自分にとっては遠いものだ”っていう視点がよくわかる。僕たちは浦安出身だから、東京のことをそんなふうに見てるんです。次に紹介する本も、僕からしたら今紹介してきた本と繋がってて。

— 柄谷行人さんの『世界史の構造』ですね。これもアドベンチャー的に読んでる?

菅原 そうです。世界の見方をちょっと変えてくれる本です。これは友達に勧められて、最近チャレンジして読んでます。ふつう歴史に触れたり、学ぶときって、その具体的な史実を時系列順に追っていくじゃないですか。でもこれは世界の歴史を、その時代の交換様式で捉えるっていう本なんです。つまり、世界の新しい見方がわかる。ちょっと難しいんですけど、これが凄くて。さらに不思議なもので、未来のことも見えてくるんですよ。ただ時系列順に世界史を勉強しても見えないことが想像できるっていうか。そして、これは平和を求める本だと思います。

— メッセージ性がある感じなんですか?

菅原 柄谷行人さんって方の研究結果をまとめた本なんですけど、何のために研究するのかっていうと、平和なんじゃないかなと思って。幸せとか、愛とか、平和とかに繋がる。読んでいてワクワクします。

夏目 面白そう。こういうの好きだな。大学出てから、こういう本は読まなくなったね。

菅原 うん。あ、そうだ、最近だとポケモンGOとか。これも世界の見方を変えてくれる。

夏目 最高だよね。

菅原 “自分は今どこにいるのか”っていうのを、インターネットを介して、しかもゲームで感じられるって超面白い。

— 地図とか見るのが好きなんですか?

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プロフェッショナルの本棚

ホンシェルジュ

本棚は人を表す、といいます。本連載は、さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人のもつ本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひも解いていこうという試み。本がいまの自分をつくったという人から、ほとんど本を読まない人の本...もっと読む

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コメント

panparth シャムキャッツの方々がおすすめの本を紹介してる。柄谷行人『世界史の構造』など。読み方にすごく共感しました……! 4年弱前 replyretweetfavorite

masa_shoji 最新記事、公開!! |[今なら無料!] 4年弱前 replyretweetfavorite