素人がカネ儲けに手を出すリスクは大きい
カネに悩んだり執着したりして、人生を棒に振るような危険性を、100%回避できる方法がひとつある。
カネ儲けには一切、手を出さないことだ。
『闇金ウシジマくん』でも現実社会でも、借金をつくったりカネに困ったりしている人の多くは、株やFX、パチンコや公営ギャンブル、怪しいネズミ講や投資詐欺など、何がしかのカネ儲けにハマッたのがきっかけで追いこまれる。
「フリーエージェントくん」編で、一攫千金を目指す若者がカネ儲けについて説かれるシーン。カネ儲けやビジネスでは、リスクゼロの選択などないが、リスクの向こうにあるチャンスを取りに行く勇気も必要だ。(『闇金ウシジマくん』フリーエージェントくん編は30巻、31巻、32巻)
過剰な買い物、新興宗教へのお布施、ホストへの貢ぎ……なども、カネを失う原因ではあるけれど、消費の目的の根っこが違う。カネを使うこと自体に喜びがあるので、借金うんぬんではなく心の問題だ。そっちの解決は医者に任せた方が良い。
カネ儲けが目当てでつくる借金は、ケタが違う。貯金はすぐに底をつき、親類や知り合いにカネを借りまくっても、ぜんぜん足りなくなる。
失った分を取り戻そうとして、さらに別のカネ儲けに借金を投じ、またカネを失っていく。悪循環のすえ、闇金に頼るしかなくなるというのが、転落のパターンだ。
カネ儲け自体は悪いことではない。ただし、ちゃんとした知識と方法を学んでおかないと、失敗するリスクは高まる。要は、カネ儲けに目が眩んではいけないということだ。素人なら、なおさらだ。
なかでも投資ビジネスは要注意。プロでもそう簡単には、うまくいかない。適切な準備をせずに、ラクにカネを殖やそうと挑めば、必ず手痛いしっぺ返しをくらう。
リーマンショックが起きる以前に展開されていた、ベンチャー企業による外国為替を使った金融商品ビジネスの例を紹介しよう。
リーマンショック以前は、米ドルの金利は約3%、オーストラリアドルやポンドは、もっと高かった。このためそれらの国の為替を日本円で買い、金利分だけ儲けようという投資ビジネスが一部で人気を集めていた。ゼロ金利が続く日本ならではの商法だったと言える。
売り文句は「1万円投資すれば1万2千円になって返ってきます」という感じ。しかも元本の1万円はそれ以下に減らず、必ず戻ってくるという。しかし投資システムを細かく調べると、そう簡単な儲け話ではない。投資金がほぼ戻って来ないリスクも大いにあり得た。
だけど個人投資家たちは、売りこんでくるベンチャー企業の口車にあっさり乗せられた。「元金が減らないなら買う!」と、続々とカネを注ぎこんでしまった。
「いい儲け話を聞いた!」程度のノリは危ない
もう少し進化した金融商品を、私も買ったことがある。だが私はシステムをきちんと理解した上で買っているので、売り主のベンチャー企業に「長いこと投資してると、リスクは高まりますよね?」と言うと、「……さすがわかってらっしゃいますね」と苦笑いされた。
そしてリーマンショックが起きた。
マネー市場が急激に円高に振れ、外国為替を買いまくっていた投資家は、大損しまくった。
株式担保で投資していたオーナー株主も大勢いたが、株を手放さざるをえなくなった。あの時期、カネ持ちだった田舎の社長や土地成金の年寄りが、急に一文無しの貧乏人になってしまう話が増えたのは、そういうことだ。