第4回】大学の「売り」とは何か

「大学の広報はもっと崩れていい」と語る世耕氏。その論拠は何か。そもそも大学は何をアピールすべきなのか。世耕石弘氏と川上徹也氏の対談、最終回。

川上 企業は栄枯盛衰ありますけど、大学は競争が意識されずにここまで来てしまった。その結果、差別化戦略も今日までほとんど考えられてこなかった。

世耕 そう、それが問題なんです。意思決定が何もできないなんて、これが企業なら自然と市場から退場していくのに、大学だからそれがなかった。そういうところが変わらないまま、同じ大学が君臨し続けると、すべての大学が地盤沈下を起こしてしまう。大学が地盤沈下を起こすと、そこから日本の活力も下がってくる

川上 大学に関する問題としては、「2018年問題」(少子化及び大学進学率の低下から、大学進学者の減少が続いている問題。2018年以降は18歳人口の減少により、さらに加速すると言われている)も挙げられますね。

世耕 2018年、もう2年後です。ここから私立はバタバタと潰れていくでしょう。

川上 世耕さんとしても、その予兆は感じていらっしゃる?

世耕 危ないところはかなり多いと思います。しかも学校を取り潰すかどうかは最終的には銀行が決めること。いくつかの大学が潰れたら「このレベルなら潰してもいいんだ」という指標ができて、そこからはどんどん加速するでしょう。

川上 恐ろしい事態ですね。

世耕 もちろん人口減少と同じくらいのペースでポツポツと潰れだす可能性もありますが、そもそもこうなってくると大学に行くことの価値観自体が変わる可能性があります。いま大学進学率は50%を少し切るくらいですが、大学に行くことをよしとする価値観が疑われ始めたら、進学率も大きく減少し始めると思います。

川上 価値をそれぞれの大学がどう打ち出していくかも重要になりますね。

世耕 今の大学の授業は、学部によってはネットにある情報で十分講義と同等の内容を学べます。大講義室で学生の半分くらいが寝ているということはどこの大学でもあります。「あんなに高い学費を払って寝ている」と教授は怒りますが、僕から言わせると寝てしまうような授業をやっていることも問題。寝るのはもちろんよくないですが、結局日本の大学は残念ながらその程度のクオリティの授業しか出来ていないのが実情なので、このままでは大学の価値は下がる一方です。

川上 しかしそういった点の改善となると、広報の立場ではなかなか難しいのでは。

世耕 ただ、教育に関するイノベーションに事務方からアプローチしていこうという思いは、常に持って動いています。例えば出席管理システム。今は講義室に入る際、カードをタッチして反応させるシステムになっているんですが、その情報を親と共有できるようにしては?といった案も出しています。テレビ局も取材をしてくださいましたが、これは炎上しました。でもどうしてこんな案を出したかというと、「退学者を少しでも減らしたい」という思いからなんです。 近大でも退学者は全体の7~8%ほどいます。だけど、その中に「勉強についていけなくて辞める」という学生はあまりいないんです。じゃあ何が理由かというと、アルバイトや遊びにハマって単位が取れなくなって……というパターンがほとんど。
 学校に来てくれさえすれば学校側でもある程度まではカバーできますが、来ないのでは打ち手がない。学生の自主性というのはありますが、そもそも今は大半の学生が親の支援で大学生をやれています。じゃあ、親に出席状況を見せれば、速攻性のある対応に繋がるじゃないですか。どうにもならない状況になる前に学校に来られるようになるなら、僕はそれもひとつの教育だと思うんです。

自分たちの立ち位置や強みをしっかり理解していれば、 どんな大学でも良いコピーは作れる

川上 世耕さん、近大に来られて、9年ということですが、チームとしての広報としての意識も変わってきたのでしょうね。

世耕 そうですね。全員が他の大学の広告も、かなり注意して見るようになりました。

川上 最近見た中で気になった大学の広告はありました?

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驚きの近大広報 世耕石弘×川上徹也

川上徹也

2013年、志願者数日本一を実現した近畿大学。その背景には、広報から始まる数々の改革があった。仕掛人である世耕石弘氏にコピーライターの川上徹也が聞いた、驚くべき宣伝手法。全四回(9月21日、28日、10月5日、12日)。

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