SF BOOK SCOPE

どこまでも飛べ、ぼくたちのロケット—『青い海の宇宙港』

『夏のロケット』『川の名前』で知られる川端裕人氏の最新作『青い海の宇宙港』が刊行されました。小学六年生の少年が、ロケットの発射場がある島の小学校の宇宙遊学生として過ごす一年を描いた成長物語です。困難を乗り越え、彼らはロケットを打ち上げることができるのか――?

 ロケットを打ち上げる宇宙港を擁する南の島「多根島」。生き物が好きな天羽駆(あもう・かける)は、小学六年生の一年間を多根島で過ごす宇宙遊学生という制度を使って、島にやってきた。元気な島の娘の希実、日仏ハーフで宇宙飛行士の娘の萌奈美、本気で宇宙探査を目指す周太と知り合い、四人はやがて探査機を作り、宇宙を目指そうとする—。

 川端裕人の最新作『青い海の宇宙港』は、デビュー作『夏のロケット』と同じ世界の2020年代を舞台とした作品だ。舞台のモデルは、実際に宇宙航空研究開発機構のロケット射場のある種子島。

 島の描写はとてもリアルだ。自分は打ち上げ取材で何度も種子島に行っているが、「これは、あの場所のことだな」とすぐにわかるぐらいである。

 が、描写もストーリーも、ただリアルなだけでなく、また科学と宇宙一辺倒というわけでもない。多根島は、神様の島でもあり、主人公の駆は、何度も超自然的と思える体験をする。“思える”というところが、いかにも川端作品らしい。作中で後から合理的な説明がついたり、あるいは「つけられる」と読者が感じるように描きつつ、同時に「体験した駆本人にとっては現実なのだろう」とも思わせる。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

SFマガジン

この連載について

SF BOOK SCOPE

松浦晋也

注目のSF関連新刊書籍を、いちはやくレビュウします。

関連キーワード

コメント

hi_doi (本文より引用)”それは神秘というよりも、むしろ主観というべきだろう。川端の小説では、客観的かつ普遍的な自然科学・技術と、人文的な「人間の主観の世界」とが交錯することが多い”(ここまで) - 松浦晋也さんによる『青い海の宇宙港』紹介 https://t.co/KTV64NjR8X 約3年前 replyretweetfavorite

tabloud SFマガジン掲載の、松浦晋也氏による『青い海の宇宙港』(川端裕人)の書評をcakesで公開させていただきました。「傑作だ。読むべし」と松浦さんもおっしゃっています。わたしも川端さんの新たな代表作になる作品だと思います。ぜひ! https://t.co/1viikJvFrI 約3年前 replyretweetfavorite

Rsider 松浦晋也さんのSFマガジンでの書評(「青い海の宇宙港」について)が、アップされている! あざっす。 https://t.co/bfBions8GS https://t.co/NljRQgNDAA 約3年前 replyretweetfavorite

YukariWatanabe 川端裕人さん @Rsider の新刊を読むと、子どもに戻って島に宇宙遊学してロケットを作りたくなりますよ〜> 約3年前 replyretweetfavorite