ロケットを打ち上げる宇宙港を擁する南の島「多根島」。生き物が好きな天羽駆(あもう・かける)は、小学六年生の一年間を多根島で過ごす宇宙遊学生という制度を使って、島にやってきた。元気な島の娘の希実、日仏ハーフで宇宙飛行士の娘の萌奈美、本気で宇宙探査を目指す周太と知り合い、四人はやがて探査機を作り、宇宙を目指そうとする——。
川端裕人の最新作『青い海の宇宙港』は、デビュー作『夏のロケット』と同じ世界の2020年代を舞台とした作品だ。舞台のモデルは、実際に宇宙航空研究開発機構のロケット射場のある種子島。
島の描写はとてもリアルだ。自分は打ち上げ取材で何度も種子島に行っているが、「これは、あの場所のことだな」とすぐにわかるぐらいである。
が、描写もストーリーも、ただリアルなだけでなく、また科学と宇宙一辺倒というわけでもない。多根島は、神様の島でもあり、主人公の駆は、何度も超自然的と思える体験をする。“思える”というところが、いかにも川端作品らしい。作中で後から合理的な説明がついたり、あるいは「つけられる」と読者が感じるように描きつつ、同時に「体験した駆本人にとっては現実なのだろう」とも思わせる。
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