僕が引退をしたのは、34歳のときです。
引退を決めたとき、こんな印象を持ちました。
「間に合わなかったな」
「あと 10年、20代のときの身体でいさせてくれたら、銅メダルでは終わらなかったかもしれない。あと10 年、時間をくれたら、金メダルが獲れたかもしれない」
でも、時間は有限です。
身体機能は、加齢とともに低下します。
時間に抗うことができない以上、僕の陸上選手としての限界値は、34歳であり、銅メダルだったのです。
25年間の選手生活を通して学んだのは、人間には、限界があるということです。
人間には「できること」と「できないこと」があって、どれほど努力をしても、どうにもならないことがあります。 僕がそう思うようになったのは、競技生活の中で、全力を出し切ったからです。
限界を超えようと努力をし続けたからこそ、自分の限界を知ることができました。限界を知ることができるのは、全力を出したことがある人だけです。ですが、長い間競技をしてきて思うのは、全力を出したことがある人は少ないということです。
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