ここは、東京西新宿。医療器具メーカードブ板メディカル株式会社の監査部には、
瑠雨図(ルウズ)さん「あ、あ、あ、そ、その件は追って連絡します~」
電話口でペコペコ謝っている瑠雨図さんの姿がありました。
瑠雨図さんは、営業事務から監査部に異動してきたのですが、不慣れな仕事にテンテコマイでした。
瑠雨図さん「すいません~慣れていなくて……はい~……すいません」
電話を切るとふうっと瑠雨図さんはため息をつきました。
路地さん「……慣れてないって言っても、異動してきてもう半年がたつじゃないですか」
そうぼそっとつぶやくのは、隣の席の路地さんです。路地さんは、ドブ板メディカルのアレでナニな内部監査機能をアレするために、金で雇われた会計士の男なのですが、
瑠雨図さん「ぐううう……」
瑠雨図さんはこの路地さんが苦手なのでした。
苦手というか、日本が法治国家でなければこいつを缶詰工場に連れて行って、缶詰の材料にしてやりたい
そのぐらいの感情は持っていました。
ちょっと、いい男だからって……。いつもいつも私のことを馬鹿にして……。こんな仕事早くやめたい……。でも……。
ハア!
金もねぇ!
彼氏もいねぇ!
そもそも出会いすりゃありゃしねぇ!!!
ぷはぁ!!!
……と、気づくと仕事終わりに、居酒屋でビールジョッキをあけている瑠雨図さんの姿がありました。
陽太「……瑠雨図さん、ピッチはやいよぉ」
瑠雨図さんの飲みっぷりに困ったように笑うのは、同期の出来内陽太(デキナイヨウタ)です。
屑谷(クズタニ)先輩「まあまあ、瑠雨図ちゃんもストレスたまってるんだろ」
と言うのは、二人の先輩の屑谷良(リョウ)です。二人とも帰ろうとしたところを瑠雨図さんに捕まってしまったのでした。
瑠雨図さん「本当に路地さんって嫌味っぽいんですよ。確かに異動して半年だけど、まだまだ知らないことばかりなのはしょうがないじゃないですか」
そうプリプリする瑠雨図さんにハハっと笑いながら、屑谷先輩は焼酎のグラスに口をつけました。
屑谷先輩「そういえば、瑠雨図ちゃん。営業事務の方にもなんか資料を依頼してたよね」
瑠雨図さん「ええ。本当は一か月前に依頼しておくべきだったんですが、なんせ気づいたのが今週で……本当に慣れてなくてご迷惑ばかりお掛けして……すいません」
急な依頼をしたせいで営業事務の担当者にめっちゃ文句を言われたことを思い出しながら、申し訳なさそうに瑠雨図さんは頭を下げました。
屑谷先輩「俺には関係ないから謝る必要はないよ。でもね、自分以外の誰かが関わってきたら、瑠雨図ちゃんの経験年数とかは関係ないんじゃないかな」
瑠雨図さん「え?」
瑠雨図さんは、きょとんとしました。
屑谷先輩「相手は、瑠雨図ちゃんの経験年数とかは知らないし、瑠雨図ちゃんがどのぐらい知識があるかも知らないから、相手からしてみたら『まだ半年しか経験がない』っていうのは言い訳にすぎないよ」
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