滝川クリステルをおもてなし続ける

今回の「ワダアキ考」で取り上げるのは、キャスターの滝川クリステル。最近ではリオ五輪のプレイバック番組の司会に抜擢されるなど、東京オリンピック招致の際にフランス語でしたスピーチのイメージが未だ色濃いようです。流行語にもなり、誰しもが一度は口にした(そしてしなくなった)「お・も・て・な・し」とは一体何だったのか、いまになって武田砂鉄さんが掘り起こします!

「お・も・て・な・し」から丸3年

どこからか要請を受けたわけではないのだが、今さら「お・も・て・な・し」の議論を深めたくなったので深める。ただただ深め忘れていただけなので、深めたくない人はトレンドをキャッチした別のコンテンツに移動されることをおススメしたい。2010年に刊行された自著『生き物たちへのラブレター』で、さかなクンと対談した滝川クリステルが、効率優先の漁業が、時にはウミガメまで網にかけてしまっている現状を問題視すると、さかなクンが「サ・ス・ガ~!」と「・」入りで喜ぶのだが、これを「お・も・て・な・し」のルーツとするのにはさすがに無理があるだろう。

この原稿がアップされる9月7日は、国際オリンピック委員会のIOC総会で滝川クリステルが「お・も・て・な・し」と発言してから丸3年の日にあたる。私たちの多くにとっては「軽い気持ちで『おもてなし』という言葉を使えなくなって丸3年」ということになる。「お・も・て・な・し 風俗」と検索にかければ出てくる「京都 デリヘル 祇園『お・も・て・な・し』50分10,000円~」であるとか「宮崎風俗デリヘル 完熟~お・も・て・な・し!」といったあれこれと、一緒にされたくはないのである。おしとやかな流行語は、自由気ままに加速するとこうして必ず性風俗方面が乱暴に連呼して収奪する。

この3年間ずっと疑問に思ってきたことを、今こそ解消に向かわせたい。ポール牧よろしく指パッチンして「お・も・て・な・し」と強調した狙いは分かるのだが、その直後、手を合わせて頭を下げながら、もう一度、訛り口調で「おもてなし」と繰り返した意味が分からない。昨年、ちょっとした大和言葉ブームが起きたが、その火付け役となった高橋こうじ『日本の大和言葉を美しく話す』を開くと、「もてなし」の項目に収録されている言葉は「ごゆるりと」「お心置きなく」「お口に合いますかどうか」「ほんのお口汚しですが」等々。もてなすとは、「両者の心の間で響き合う何かを見いだして、その喜びを共有すること。ショーではなくコミュニケーションです」とある。となると、それらの言葉を用いながら手を合わせるのって、さすがに一方的で、相手に対して少々無礼ですらあると思うのだが、あの滝川の「おもてなし」はコミュニケーションではなくショーだったのだから、いちいち突っ込んではいけないということなのか。

ざっくりとイイ感じに伝える

日本、というよりも日本人の素晴らしさを、スピーチを通じて訴えた滝川クリステル。スピーチ以降、そっちの需要は瞬く間に増え、今年3月にはBSジャパンで『滝川クリステルが見た! Discover Japan ~世界が驚く、凄いニッポン!~』という、既視感のあるニッポン礼賛番組でナビゲーターを務めていた。おもてなし以前まで、滝川クリステルはとにかくジャパニーズよりパリジャンの生き方を愛してやまなかったはず。人の興味は経年によって移り変わるものとはいえ、さすがに突然だったものだから、日本人の生き方を否定するかのようにパリジャンを闇雲に愛していた事実を掘り返したくはなる。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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0720032maro |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜|武田砂鉄|cakes(ケイクス) https://t.co/4nyw5Y7bOh 3年弱前 replyretweetfavorite