プログラマーが探偵小説を書いてみたら、傑作だった件【後篇】

犯人はプログラマー、探偵もプログラマー、書いた人もプログラマー! 情報社会の最先端を描いたミステリー『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』。作者の柳井政和さんは、フリーソフト「めもりーくりーなー」の開発者でもあり、noteでは漫画「番猫クロクロ」の連載もしています。松本清張賞の受賞を僅差で逃しながらも、作家デビューを果たした柳井さんと、先輩格(?)の海猫沢めろんさんの対談後編は、柳井さんの小説修行からデビュー前夜まで。さらに、校正ツール、プログラミング的な執筆手法など、話題は小説の未来形へと、だんだんに飛翔していきます。

プログラマーは、縛りがきついと燃える?

海猫沢 昔読ませてもらったのはホラーだったけど、今回はミステリー。ホラーはセオリーがなくて、怖いとか気持ち悪いとか、生理を文章で刺激しなければならないけれど、ミステリーは論理的なので、ある程度、計算式やマップが作りやすい。プログラミング的に物事を把握する人って、感情よりも理性とか論理に寄るから比較的やりやすかったんじゃないでしょうか。

柳井 おっしゃる通りです。まず企画書を書いて、次に設計書を書いて、プロットを書いて執筆という、プログラムの設計と似たような書き方をしていますね。この話を書こう、というよりは、自分に書けそうで、今まで書かれていない題材、と条件を限定して、それにあてはまる企画を考えていく、という順番です。

海猫沢 ほう。それ、すごいなあ。でもそれ、モチベーションが削られないですか? 普通は、まずやりたいことが最初にあって、それを出したいから、ワーッとやるじゃないですか。でもそうやってやりたいことが消去法で削られていくと、最後に残ったものに対して「本当に自分はこれがやりたいのか」と思うことはありませんか?

柳井 いや、でもそうやって限定された中で組み上げていくのは楽しいですよ。プログラマーの方はわかると思うんですが、「縛りがきついと燃える」んですよ(笑)。条件が厳しくなればなるほど自分の技術でそれをクリアしてやろうという気持ちになるので、そこはモチベーションが上がるところなんです。

海猫沢 あああ、すごいなあ。マゾですねそれは(笑)。小説を書くのとプログラムを書くのって似てました? やってみて。

柳井 だいぶ違うけれども結構似ている部分もありました。小説は、最終的にはストリームデータ(始まりから終わりまで一方向に流れる情報)を、読者の脳で処理してもらって完成するものですよね。なので、どういうデータを流せばどういう反応が起きるかと考えながら文字を並べていく。そういう意味では、情報の順番で、どういう風な脳内処理をさせていくかということを想定しながら組み立てていく。

海猫沢 ふんふん。

柳井 最後にそれを、個人的にはレンダリングと呼んでいるんですが、小説の文章にしていく。そういう作り方ですね。違うのは、プログラムは、書いたあとにボタンを一個押せば、これが合っているかどうかの答え合わせができるけれども、小説はそれができないから難しい。

海猫沢 確かに。書き終わったあとピッて押して「これなら100万部売れます」とかわかるなら苦労しないんですけどね。でも、もう人工知能の解析とかでそういうプログラムが作れそうじゃないですか。

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ハッカー探偵誕生—柳井政和×海猫沢めろん対談

柳井政和 /海猫沢めろん

犯人はプログラマー、探偵もプログラマー、書いた人もプログラマー! 情報社会の最先端を描いたミステリー『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』。作者の柳井政和さんは、フリーソフト「めもりーくりーなー」の開発者でもあり、noteで...もっと読む

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コメント

inasoft_ayacy ホラーはデバッグしづらいけど、ミステリーはデバッグしやすい。- 10ヶ月前 replyretweetfavorite

consaba 柳井政和+海猫沢めろん  #life954 #genroncafe 10ヶ月前 replyretweetfavorite

mizunotori #作家 #対談 10ヶ月前 replyretweetfavorite

ruten 海猫沢めろん先生との対談。小説とITが融合した未来の話。実際の対談は、他にも質疑応答で濃い話を色々としました。→ #小説 10ヶ月前 replyretweetfavorite