なんかデビュー前の、それこそ『虫愛ずる姫君』とか
描いてたときの伸びやかさはすごいあって。
宮本 これページ数はどういうふうに決めたんですか。
——いや、もう最初、全部で160ページぐらいと言ってたんですけど、全然収まらなくて、倍以上で(笑)。
宮本 雑誌じゃないから要するに、けっこう各エピソードのページ数まちまちじゃないですか。そのへんは、これは何ページというのは基本、武富さん任せ?
——うん、そうですね。
武富 そう、そのへんはまったく自由にやらせてもらって。途中、僕もさすがに少し気にしてたんですけど。単行本1冊というところはこだわってらっしゃいましたし。ときどき、僕、「このまま行くと単行本2冊ですね」みたいな話はしていて、「いや、1冊です」ってそこはけっこう譲らないんですよ。でも、そのわりに、「全1巻で収めるんだから、この作品は何ページぐらいに抑えて」って話は全然ないので、まあ、いいやって(笑)。
僕もこの作品に関しては詰め詰めにしないでのびのび気持ちよく描きたかったですし、今回は普通のコミカライズではカットされる部分をカットせずにやるっていうコンセプトもあるし、かといって詰め込みになっちゃってもつまんないんで、やっぱりゆったり取るところはゆったり取りたいってことで、許して頂けるのであれば自分でスポイルするのももったいないと思ってもうそこは気にせずにネーム切りました。
宮本 それはほら、雑誌連載だと必ず16なら16とかって毎号決まったページ数があって、そこに収めていくという作業があるじゃないですか。それがないと逆にペースが乱れるみたいなことはないんですか。ずっとそれで合わせてやってきたわけじゃないですか。
武富 それこそ締切りがきっちり、例えばひと月ごとみたいな感じで厳格に決まっていたら、そういう感じだったと思いますけど、そこも雨月ではかなり緩く…いや単行本描き下しなのをいいことに僕が勝手にしてたんですけど(笑)、できないものはできないって感じでズルズルやってたんで。
本当に、デビュー前の、それこそ『虫愛づる姫君』とか描いてたときの伸びやかさはすごいあって。すごいそういう意味では気持ちよく描かせてもらったですね。
もちろん、気持ちよく描けばよくなるってもんでもなくて意外と制限があってキュッとした中でやったほうがいいって場合もあるんですけど、今回はそのへん、ゆったりやらせていただいたりしただけのことはあったかなとは思ってるんですけどね、うまい方向に行ったかなと。
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