第3回「普通ならカットされる部分をカットせずにやるっていうコンセプトで」

幻想怪奇文学の古典である『雨月物語』に真正面から「漫画訳」に挑んだ意欲作を8年越しで上梓した武富さんが盟友・宮本大人さんと作品に込められた思いやその裏話を語る対談の第3回目。


なんかデビュー前の、それこそ『虫愛ずる姫君』とか
描いてたときの伸びやかさはすごいあって。


宮本 これページ数はどういうふうに決めたんですか。

—いや、もう最初、全部で160ページぐらいと言ってたんですけど、全然収まらなくて、倍以上で(笑)。

宮本 雑誌じゃないから要するに、けっこう各エピソードのページ数まちまちじゃないですか。そのへんは、これは何ページというのは基本、武富さん任せ?

—うん、そうですね。

武富 そう、そのへんはまったく自由にやらせてもらって。途中、僕もさすがに少し気にしてたんですけど。単行本1冊というところはこだわってらっしゃいましたし。ときどき、僕、「このまま行くと単行本2冊ですね」みたいな話はしていて、「いや、1冊です」ってそこはけっこう譲らないんですよ。でも、そのわりに、「全1巻で収めるんだから、この作品は何ページぐらいに抑えて」って話は全然ないので、まあ、いいやって(笑)。
 僕もこの作品に関しては詰め詰めにしないでのびのび気持ちよく描きたかったですし、今回は普通のコミカライズではカットされる部分をカットせずにやるっていうコンセプトもあるし、かといって詰め込みになっちゃってもつまんないんで、やっぱりゆったり取るところはゆったり取りたいってことで、許して頂けるのであれば自分でスポイルするのももったいないと思ってもうそこは気にせずにネーム切りました。

宮本 それはほら、雑誌連載だと必ず16なら16とかって毎号決まったページ数があって、そこに収めていくという作業があるじゃないですか。それがないと逆にペースが乱れるみたいなことはないんですか。ずっとそれで合わせてやってきたわけじゃないですか。

武富 それこそ締切りがきっちり、例えばひと月ごとみたいな感じで厳格に決まっていたら、そういう感じだったと思いますけど、そこも雨月ではかなり緩く…いや単行本描き下しなのをいいことに僕が勝手にしてたんですけど(笑)、できないものはできないって感じでズルズルやってたんで。
 本当に、デビュー前の、それこそ『虫愛づる姫君』とか描いてたときの伸びやかさはすごいあって。すごいそういう意味では気持ちよく描かせてもらったですね。
 もちろん、気持ちよく描けばよくなるってもんでもなくて意外と制限があってキュッとした中でやったほうがいいって場合もあるんですけど、今回はそのへん、ゆったりやらせていただいたりしただけのことはあったかなとは思ってるんですけどね、うまい方向に行ったかなと。

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雨月物語』を「漫画訳」しました!

宮本大人

名作『鈴木先生』の著者・武富健治さんの『漫画訳 雨月物語』(PHP研究所刊)が好評発売中です。幻想怪奇文学の古典である『雨月物語』に真正面から「漫画訳」に挑んだ意欲作は芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんも絶賛です。8年越しの執筆を終えた武...もっと読む

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ryosuketono 宮本先生との漫画訳雨月対談、やはり有料は手違いだったようで、 約2年前 replyretweetfavorite