日系の大手メーカーで順風満帆な日々を送っていたにもかかわらず、あっさりそれを捨て、はるかに小さなメーカーに転職した人、それが会田誠二さん(仮名)だ。
だが、年収は少なくとも200万円以上はアップしており、2000万円以上を獲得している。転職としては大成功の部類に入る。
そんな会田さんの転職の目的は、ずばりスキルアップだ。会社員の他に将来やりたいことがあるからで、前の会社に入社したのも、大企業のオペレーション手法を身に付けるためだった。だからこそ、多くのことを身に付けようと仕事は目いっぱいやった。
技術系ではあるが、自分で企画した商品を営業の課長と顧客に売り込みに行くなど、言われたことをこなした上で、自主的に動いて結果を出すのだ。それらの働きが認められ、事業部横断で行うプロジェクトチームのリーダーに指名されるなど、大きな仕事を任されるようになっていた。
そしてあるとき、海外子会社の社長に抜擢される。年齢からいって、本社に戻ってくるのは50歳を過ぎてからと思われた。将来の夢のため、転職はいつも頭の片隅にあったし、実際、会社を辞めてもやっていける自信はあった。とはいえ、その年齢では「仕事が限られる可能性がある」。
そこで自身に課したのが、まずは海外子会社で社長として働き、自分のことを何も知らない人でも採用したくなるような、数値的に圧倒的な説得力を持つ実績を出すことだった。結局、リーマンショックによる世界経済の混迷で一時は赤字に転落するも、立て直しに奔走。結果、過去最高益をたたき出し、わずか数年で本社に舞い戻った。
ただ、実際、転職の引き金を引いたのは、本社に戻ってからの仕事への幻滅だった。「それなりの立場は用意されたが、下手すると子会社の社長をしていたときよりレベルの低い仕事をしなければならなかった」。
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