第2回「武富健治が雨月物語に仕掛けたこと」

幻想怪奇文学の古典である『雨月物語』に真正面から「漫画訳」に挑んだ意欲作を8年越しで上梓した武富さんが盟友・宮本大人さんと作品に込められた思いやその裏話を語る対談第2回目。


1編につき何か画期的な仕掛けを1つじゃなくて
2つか3つぐらいは仕掛けたいと思った。

宮本 今回の『漫画訳 雨月物語』、率直に、どこが難しかったとこで、どこがやってて面白かったとこなのかなというのをお聞きしたいんですけど。

武富 最初は正直、『鈴木先生』のあと、意識的に、積極的に原作付きの仕事をやっていて、いわゆる何というのかな、与えられた仕事をこなす商業漫画家としての能力も発揮したいというのをやってるキャンペーン時期だったんで、その中の一環として受けたぐらいの気持ちだったんですね。古典コミカライズも仕事としてこなそうみたいな感じで。けど受けてみて改めて原作と向き合ってみると、本当に自分に合う素材だったんだなってことで本気モードが発動してしまった。

それで、「白峯」がわりとイメージ通り描けてしまったんで、この密度で9編全部揃えるにはどうしたらいいかなというのがあってそのあとがきつかったです。8話目の「青頭巾」とかはもともと最初からちょっと見えてるものがあったので、いけるなと思ってたんですけど、意外とメジャーな「浅茅が宿」と「吉備津の釜」と「蛇性の婬」、特に有名でよくコミカライズされる機会も多いそれらの短編で自分の持ち味をどう濃厚に盛り込むべきか、描くぎりぎりまで見えてこなかった。1編につき1つじゃなくて2つか3つぐらいは何か画期的な仕掛けを作りたいと思ったんですけど、それがなかなかその3作に関しては、どうしようかなってけっこう頭ひねりながらネームを描きましたかね。

 それがどうやって見つかったか、もう覚えてないんですけど、多分、格闘してるうちに、例えば『あしたのジョー』のテンプルじゃないけど、振り回してるうちにバッと当たって、「あ、これだ!」みたいな感じで見つかるような感じのときもありました。まあ、『鈴木先生』のときもそうでしたけど、格闘してるとあるとき、「あ、これだ!」みたいなのが見つかって、けっこうギリギリで……。

 もともと、頭から順番に描いていくという約束事もなかったんですけど、なんとなく「白峯」描いて、次「菊花の約」描けたので、じゃあ、せっかくだったら順番通り描いていこうかなみたいな感じの縛りがなんとなく自分の中で出来て……。いざとなったら、雑誌連載じゃなく描き下ろし単行本なんだから、別に順番通りじゃなくても、もし何か次のやつがどうしてもアイディア出てこなかったら、飛ばしてその次のにしようぐらいのことは思ってたんですけど、追い込んでいくとその都度2つ3つはコンセプトが見つかったんで、結果的には頭から順に描くことができました。

宮本 やってて発見として面白かったとことかは。

武富 最初におっしゃっていただいた、裏の意味合いがやっぱり二重、三重の構造になってるというのが、わかって描いたような感じに取り繕って描いてますけど、結果的に本当ギリギリで見つかったことも多かったので、描いていて本当にスリリングでした。ネームや、場合によっては原稿にペン入れしながら、「ああ、あ、ここにもあった、見つけた」みたいになって下描きを描き直すみたいのもありましたもんね。

宮本 その過程で編集担当の伊丹さんとは相談とかしてないんですか。

—そのへんについてはあまりしなかったですね。

武富 そうですね。基本的にはネームを出して、それに関して意見をいただくという感じでしたね。

宮本 そこのやりとりで何か気づくようなこととかもあったんですか。

武富 実はけっこういくつもありましたね。

宮本 具体的にどこか「ここは」みたいなのは。

—でも、そんなに僕、基本的にネームに修正は入れてないですよね(笑)。

武富 あ、数は少ないですかね、そうですね。

宮本 武富オールスターズにするというのは最初からそういうふうに?

武富 そうですね。最初の依頼のときから、それで行きましょうみたいな。

宮本 誰を誰役にするとかっていうのは作品の解釈と関わってきますよね。それはどの段階で? 先に割り振りを決めてたんですか。

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この連載について

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雨月物語』を「漫画訳」しました!

宮本大人

名作『鈴木先生』の著者・武富健治さんの『漫画訳 雨月物語』(PHP研究所刊)が好評発売中です。幻想怪奇文学の古典である『雨月物語』に真正面から「漫画訳」に挑んだ意欲作は芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんも絶賛です。8年越しの執筆を終えた武...もっと読む

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Moegaku69 対談企画第2段です〜! 3年以上前 replyretweetfavorite