徳光和夫の号泣を受け止める

今回の「ワダアキ考」で取り上げるのは、今年の日本テレビ『24時間テレビ』で、存在が消えてしまったあの人。ポスターから削除されてしまった例の人、ではなく、最初からポスターにさえ出ていなかった徳光和夫です。しかし出演者にクレジットはされていて、間違いなく存在していたはず。目を凝らして『24時間テレビ』のフィナーレを見ていた武田砂鉄さんは、唐突に現れた徳光のある行動に気づきます。

号泣する準備ができていない

江國香織『号泣する準備はできていた』は言わずと知れた名著だが、放送の数週間前からCMなどで「号泣する準備はできていますか?」と問いかけてくる24時間テレビは、さらに1週間くらい前になると出演陣が「号泣する準備はできています!」と前のめりになり、本番を迎えると前のめりどころかたちまち号泣していて、こちらはまだ号泣する準備ができていないんです、と申し出ることすら許されなくなる。

恒例の24時間テレビに合わせて、そもそも号泣する準備を整える必要なんてない、と教えてくれたのが、「障害者のための情報バラエティ」を謳うNHK・Eテレ『バリバラ』だった。24時間テレビのクライマックスに合わせるように、日曜日の19時から「検証!〈障害者×感動〉の方程式」と題した放送を始めた。障害者を号泣につなげる猛スピードと類型化を、障害者自身が笑い飛ばす。24時間テレビを根本から否定するのではなく、「泣きたいなら泣けばいいのであって、号泣する準備なんて要らない」と教えてくれた。

お茶の間の号泣を誘発してきた徳光和夫

こちらは号泣する準備がちっともできていなかったので、その日の深夜に録画で24時間テレビの後半部分を見たのだが、とにかく徳光和夫の存在感の薄さが気になって仕方ない。そればかりが気になり、号泣する準備ができないまま、「サライ」のイントロが流れ始めてしまう。1980年から2010年まで31年連続で総合司会を務め、2011年にはマラソンランナーに起用、それ以降は「サポーター」名義で番組に参加している徳光。彼の主たる業務は変わらない。号泣要員としてワイプに涙する自分を提供し、お茶の間の号泣を誘発していく。大切な役務だ。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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