SNSで簡単に「いいね!」するヤツは危ない

『闇金ウシジマくん』を読むべきマンガ第1位に推す堀江貴文さん。書籍『ウシジマくんvs. ホリエモン 人生はカネじゃない!』で34のマンガ名シーンを厳選紹介している中から、そのベスト5を特別公開します。
1回目は、第5位のシーン。総務省の調査では、いまや国民の6割以上が利用しているSNSの利用者に、重大な危険性を注意喚起しています。

社会現象や裏社会の実態をリアルに描写

『闇金ウシジマくん』で描かれる数々のストーリーのなかには、現実に起きた事件を想起させるエピソードがいくつも存在している。ちょうどTVドラマ『闇金ウシジマくん Season3』の原作になった『洗脳くん』編も、そのひとつだ。


『洗脳くん』編に登場する詐欺師・神堂が占い師の勅使河原に「人間の本質」について説くシーン。「人間は追い詰めれば客観性を失い都合よく物事を捉えるので、騙されてる事に気が付けなくなる」と言うが、現実社会では追い詰められる以前に、物事を見きわめない人が多い。(『闇金ウシジマくん』洗脳くん編は26巻, 27巻, 28巻

 冷酷な詐欺師・神堂大道は、主人公のリア充指向のOL・上原まゆみに近づき、言葉巧みに婚約にまでこぎつける。だが次第に暴力をふるうようになり、まゆみを心身ともに支配。そして彼女の家族にも接近して、全員の洗脳に成功する。神堂の狙いはまゆみ一家の全財産没収。家族同士で殺し合うように仕向け、ついには父親の命を奪った。

 神堂は弁舌の上手さで、善良な人々を完全服従させ、カネと人間性と思考力を根こそぎ奪う。もっともらしい空虚な言葉を並べたて、悪びれることは一切ない。人間らしい良心を微塵たりとも感じさせることがない男だ。悪人ぞろいの『闇金ウシジマくん』の登場人物の中でも、際だって危険性の高い、最恐のモンスターと言える。

『洗脳くん』編で描かれるエピソードは、2002年に発覚した「北九州連続監禁殺人事件」と重なる点が多い。北九州連続監禁殺人事件のあらましを説明しておく。福岡県久留米市で1980年、地元の名士の家に育った緒方純子のもとに、高校時代の同窓生だった松永太が電話をかけてきた。それが悪夢の始まりだった。

 松永は明るく爽やかなルックスで、しゃべりが上手い、魅力的な男だった。だが正体はサディスティックで、他人を支配し、財産を絞り尽くすカネの亡者だった。しかも他人の命(女・子どもだろうと)を奪うことも平気な、サイコパスだ。軽薄な話術と、無自覚なサディズムによる暴力性で、一部の人々を完全に洗脳した松永の手口と人物像は、神堂のキャラクターと重なっている。

薄っぺらい内容の人生訓に感動してシェア

 松永や神堂のようなサイコパスの詐欺師は、他にも実在する。人を騙そうとかカネを巻き上げようという明確な悪意があるならまだしも、本当に無自覚に、善意で洗脳を仕掛ける人間が、一般社会にも普通にいるのだ。神堂のセリフのなかには、一聞すると的を射ていそうなものが、いくつかある。

「正社員が夢という子供に今の大人がなんの夢を与えられるというのでしょうか? 人間の可能性というのは無限に広がっているばずです。お金がないとダメという巨大な洗脳の中で現代人は生きている。親が子供を洗脳している世の中です。」

「生きがいは理屈から生まれてくるものではありません。心の奥底からつき上がる感動がなければ生まれません。」

「人間は最悪な状況下で現実逃避ができる知能の高い動物です。なので追い詰めれば客観性を失い都合よく物事を捉えるので、騙されてる事に気が付けなくなるのです。」

 現実社会にも、こういう言葉を好んで口にするヤツがいる。何の狙いがあるのか、SNSなどで積極的にシェアしようとするヤツも少なくない。私の知り合いにもLINEのグループなどで、オリジナルの人生訓やらポエミーな啓発メッセージを公開している。いかにも思いつきの薄っぺらい内容ばかりなのだが、問題は、こういう言葉に引っかかり、感動してしまう人が、驚くほど多いということだ。

 そんなヤツの人生訓や啓発メッセージに、すごい数の「いいね!」が付き、「感動しました!」「シェアします」「勇気が湧きました」という大量のコメントが寄せられる。本気か? と思うけど、どうやら本気らしい。

 感動するのは勝手だが……よく考えるとペラペラの言葉に、簡単に心を揺さぶられるような人が多いのは信じられない。思考のハードルが低い、その辺の詐欺師にすら騙されやすいタイプの人たちだ。

SNSで簡単に「いいね!」する人の危険性

 神堂や松永のようなモンスターに対して私は、こういう人も実際にいるよね、まあ出会わないけど……ぐらいの感想だ。むしろ、神堂に狙われるOLのまゆみの姿に、少なからず危機感を覚えた。彼女は最初、頭の弱い女性ではなかったし、判断力が低くもなかった。倫理が欠けている悪人でもなかった。

 ただ、「いいね!」ボタンを押すハードルが低い。目の前の情報が真実なのか、本質なのかどうかを見極める、猜疑心もなかった。一言でいうなら成熟が足りない。それは、最近見る、ありきたりのごく一般市民の姿だ。まゆみのような人がどれだけ多いか、「いいね!」のあふれるスマホの画面からもうかがえる。

 多くの人が疑いの目で物事を見きわめる力をなくしている。人を疑ってはいけないとか、すべての責任は自分でとるべきだという、教育の影響もあるだろう。神堂的な人は、いたるところにいる。そして神堂の犠牲になったまゆみ的な人は、その何倍もいる。

 お互いに騙している、騙されているという自覚があるかないかは関係ない。洗脳は深く静かに進行する。北九州連続監禁殺人事件のように、よほど凶悪な犯行が表沙汰にならない限り、洗脳事件は明らかにはされない。現代社会の根深い闇だ。

次回ベスト4「勤め先が“ブラック”ならすぐに飛び出せ!」は9/2(金)更新予定

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この連載について

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堀江貴文

山田孝之さん主演の映画がファイナルを迎え、いよいよ原作もシリーズ最終章に突入した『闇金ウシジマくん』。堀江貴文さんによるコラボ企画『ウシジマくんvs. ホリエモン 人生はカネじゃない!』も、有名書店で続々ランキング1位を獲得し、大反響...もっと読む

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コメント

mojorum |『闇金ウシジマくん』名シーン|堀江貴文|cakes(ケイクス) https://t.co/S1vsmPXjDz 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

akarihon 良記事。私も、SNSで自分の状況や人生と直結しない「感動話」系にあんまりいいねを押さなくなったのは、実感がほんとに伴っていない事=本質も定かではないようなこと、を支持したりシェアしたりすることへの警戒心から。 https://t.co/9vxv2ZbYnf 2ヶ月前 replyretweetfavorite

Ryuji_Hikosaka 本質を得ているように見せかけているだけのまさに神童っぽい人、誰の身の回りにも必ず1人や2人いると思う。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

Tumapai "人を騙そうとかカネを巻き上げようという明確な悪意があるならまだしも、本当に無自覚に、善意で洗脳を仕掛ける人間が、一般社会にも普通にいるのだ。" https://t.co/fzmQQe9b85 3ヶ月前 replyretweetfavorite