目の前の壁が高すぎるときは、寄り道をせよ

「人間の本当の限界」について突き詰めた為末大さんの連載。今回のテーマは、「目の前の壁」を乗り越える、思いもよらないやり方の話です。走り高跳びで「背面跳び」を生み出した選手は、実はすごい選手ではなく、人並みの成績でした。では、なぜ、そんな選手が伝説になれたのか……話題の新刊 『限界の正体-自分の小さな檻から抜け出す法』より、限界の檻を脱出するヒントを明かします。

できないからこそイノベーションが起きる

走り高跳びの跳躍スタイルは、背面跳びが一般的ですが、この背面跳びを世界ではじめて編み出した選手が、ディック・フォスベリーです。

彼は、1968年のメキシコオリンピックで、金メダルを獲得しています。彼の跳躍スタイルは、「走り高跳びの革命」とまで呼ばれました。実はフォスベリーは、跳躍に長けていたわけではありません。むしろ跳躍力は人並みでした。でも、人並みだったからこそ、新しいスタイルにたどり着いたと考えることができます。

彼は、はさみ跳びの練習の最中に、お尻がバーにあたらないように体を後ろへ傾けるようにしました。その結果、腰の高さが上がって、背中をバーに向けて跳ぶという着想を得たのです。

フォスベリーは、当時の主流だった跳び方を捨てて、まったく違う角度から限界を突破しました。

もし彼が、ベリーロールというお腹をバーに向けて回転する跳び方や、はさみ跳びで成績が残せる選手だったとしたら、自分のやり方を捨てることができずに、背面跳びの誕生も、オリンピックでの優勝もなかったでしょう。彼の成功は、王道や主流といわれたやり方を手放したことにあると思います。

できないときは寄り道をせよ

同じように、イギリスの数学者、アンドリュー・ワイルズも、手放すことによって、世紀の難問を解き明かしました。彼は、「フェルマーの最終定理」を証明してみせた人物です。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

アスリートが明かす、内的可能性に出会うための1冊!

この連載について

初回を読む
限界の正体ー自分の見えない檻から抜け出す法

為末大

400mハードルの日本記録保持者で、3度のオリンピックに出場した為末大さんの新境地。人間にとって、才能とはなにか。限界とはなにか。人間の心について学び、アスリートの成功と挫折を見るなかでたどりついた考えとは?? 長い間、人間の限界と呼...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

sizukanarudon 為末大@daijapan https://t.co/7UkpALWEw6 寄り道によって、思わぬところからゴールに近づく経路が見つかる。 人はどうしても、自分の過去や、これまでの文脈の影響を受けるので、いったん断ち切ってリセットが必要。 3年弱前 replyretweetfavorite

Singulith >「人はどうしても、自分の過去や、これまでの文脈の影響を受けるので、いったん断ち切ってリセットすることが必要です 〜1年に一度、ブータンに行き、誰とも会わず 〜ブータンから戻ると、これからやることと捨てることが明確に見えてくる」  https://t.co/S0fM30inwm 3年弱前 replyretweetfavorite

ichijou_kazuki  現在の壁を真正面から飛び越えるのではなく、別のルートからよじ登る可能性 3年弱前 replyretweetfavorite