「四条大宮×赤羽」─表通りからはわからない立ち飲み天国
東京・赤羽に似た飲み屋街、京都・四条大宮(写真はすべて撮影:岸本千佳)
阪急京都線の大宮駅前にある有名な立ち飲み屋さん「庶民」。雨にもかかわらず、夕方からすでに行列ができるほど賑わっています。料理はとにかく安くてうまい。一品300円台が相場です。即席でつくられたテーブル代わりのステンレスの台に通されました。店員のお姉さんたちのやりとりは活気があり、お客さんが配膳するなど、温かい空気が店内に充満しています。
一方、店の前に広がる駅前の四条大宮交差点で目にするのは、ファストフードにファミレス、チェーンの居酒屋が入る商業ビル。交差点だけを見ると、どの街にもありそうな風景ではあります。
2軒目に立ち寄ったのは、赤提灯の飲み屋さんが集まった路地。大宮通からは路地しか見えていなかったのですが、じつはロの字型の路地になっています。合計で50軒ほどあるのではないでしょうか。店が、これぞ居酒屋という店から、割烹、スナックと、その日の気分によって選べるのも楽しいところです。
赤羽にも同じような風景があります。赤羽は昔の人からするとあまり住みたいイメージがないようですが、現在では埼玉と東京を結ぶターミナル駅として利便性が高く、快適なわりに家賃も安いので、ファミリーやひとり暮らしなど、若い世代には結構人気になっています。
駅前の表面は、大資本のどこにでもあるようなビルが立ち並び、昼は主婦の買い物の場に、夜はサラリーマンの酒場に変貌を遂げます。裏面では昼間から飲んでいるオヤジがわんさかいる街。この表面と裏面の人が交差することは、おそらくないでしょう。 2つの世界の両輪として、昼も夜も平然と回っている──。それが赤羽と四条大宮のおもしろさでもあると思うのです。
「叡山電鉄沿線×JR中央線沿線」─一度住んだら抜けられない文化のるつぼ
東京・高円寺に似たサブカルの街、京都・元田中
叡山電鉄(略して叡電)とJR中央線は駅の規模も駅間距離もまったく異なるため、両者を比較するには無理があるのですが、中央線沿線が好きな人は、きっと叡電沿線が好きだと思います。ひとことでいってしまえばサブカルの街。ただ、サブカルとはいえ、オタク的な感じではなく、文化やアートの要素が色濃いのが特徴です。
中央線は若者から中年層にかけて住居としてのニーズが高く、中央線沿線でしか引っ越さない人も多いくらい、東京内では一目置かれた存在です。
叡電沿いも京都のなかではある種のカリスマ性があります。セレクトが秀逸で有名な書店「恵文社一乗寺店」があり、左京区内ではアート系のイベントもさかんです。飽きない魅力があるので、叡電界隈で引っ越しを繰り返す人も多いのです。
じつは、私は2015年から事務所を叡電沿線に構えたのですが、理由は「サブカルの聖地を知らずして京都は語れない」と思ったからです。居る人、そしてその人が使う場が個性豊かでおもしろいエリアなのです。
外を歩いていても、なんの仕事をしているかまったくわからない人が多いのですが、そもそもこの街の人は何屋さんかどうかで人を判断していません。私はジャズサックスを吹いているのですが、そういうニッチな音楽ネタを持っていると、この街ではかなり重宝されます。音楽や映画、旅……そんな話題に長けた人が、この街では「イイヤツ」なのです。
また、このあたりは欧米の人も多く住んでいます。先日も近所のイギリス人が大工兼ピアニストというアメリカ人の友だちを事務所に連れてきました。祇園のジャズバーでジャムセッションのホストをしているそうで、ジャズサックスのことを伝えると、「Let’s session!」を命じられました。いま、近くの高野川で絶賛練習中です。
「岡崎×上野」─非日常に誘う文化施設群
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