プロになってすぐの頃、太田哲也さんという方が書いた『クラッシュ——絶望を希望に変える瞬間』(幻冬舎文庫)という本を読んだ。
レーサーだった太田さんは、1998年の全日本GT選手権のレース中に事故に遭い、瀕死の重傷を負ってしまった。全身の火傷も壮絶で、自分の子供に見せられないほど顔も変わったという。手足も思うように動かせなくなっている状態だったが、そこから懸命なリハビリを続けて、新しい生き方を見つけていくまでの過程が描かれている。
この本を読んだとき、何不自由なくサッカーができていることはものすごく幸せなことなのだと強く実感した。そのこと自体に感謝したいし、そういう立場にいる自分は、できるだけ多くの感激や感動をひとに伝えていかなければならないのだともあらためて思った。
『クラッシュ』と、その続巻といえる『リバース——クラッシュ〈2〉魂の戻る場所』(幻冬舎文庫)を読めば、あきらめないことがいかに大切であるかもよくわかる。夢に向かってあきらめない心を持つだけでなく、ひとつの夢が断たれたとしても、そこから何ができるのかが問われることになる。
フロンターレの会報で、この本について紹介したことをきっかけに、後日、太田さん本人と直接会うこともできた。それもやはり、僕がプロ選手になっていたからこそのことだろう。自分がそういう恵まれた環境にあることを忘れてはいけないと心がけている。
大好きなサッカーを続けられる幸せ
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