ローマ人の物語』で紙の本に触れる意味を問い直す

『ローマ人の物語』評、第二回は本書の読み方について。文庫版43巻の大著を前に、どう手を付けていいかは悩ましいところ。著者・塩野七生は紙の文庫で読むことを勧めています。その意図は一体なんなのでしょうか? また本書の構成について、いよいよ中身に入っていきます。


ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)

著者もすすめる文庫版を手にする喜び

『ローマ人の物語』は素朴に向き合える本でもある。単純に「ローマ史というものが知りたいからこの著作を新しく読みたい」という場合だ。その場合、どのような指針があるだろうか。もちろんどのような書籍であれ、ただ黙々と冒頭から読めばよいとも言える。だが、本書は大著である。指針があってもよいだろう。

 本書は1992年から毎年1冊ずつハードカバーの単行本で刊行され、2006年12月15日に15冊目で完結した。2007年元旦の朝日新聞では、その完結の告知に全面広告すら出された。塩野七生自身も完結に際しては感慨をもち、自筆でこう記した。

 そして、読者もまた読み終えた後に「わかった」と思ってくれたとしたら、私にとってはこれ以上の喜びはない。なぜなら、書物とは、著者が書き、出版社が本にし、それを読者が読むことで初めて成り立つ媒体だが、この三者をつなぐ一本の赤い線が、「想いを共有する」ことにあるのだから。
 二〇〇六年、秋、ローマにて 塩野七生

 読み終えた人なら彼女のその思いは伝わる。私も「ローマ人」がわかったという思いをともにした。では何がわかったか。一言で言えば、国が始まり国が終わるということ、そしてその過程で偉大な人物が現れるということだ。それ以上については、彼女と同じく、具体的にこの長い物語を読んで欲しいという共感に極まる。

 同書は、2002年からは単行本1冊を文庫本の2冊から4冊に分冊して、2011年に全43冊でも完結した。新しい読者にしてみると、43冊の厚さは40センチを超える。普通の読書人であれば、通常の文庫本一冊は3時間ほどで読めるので、単純に計算すれば、130時間の読書というところだろう。毎日1時間の読書時間をこれに充てると、だいたい4か月はかかる。だが、その継続する読書習慣の意義は確実にあるだろう。

 著者である塩野は、文庫版で読まれることをむしろ願っている。それは文庫版の第一巻冒頭「『ローマ人の物語』の文庫版に際しての、著者から読者にあてた長い手紙」に説明されている。思いの極まるところは「タスカービレ」である。

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