魚肉ソーセージが好きだが、他人が食べているのは見たくない
編集者から、「次回取り上げるのは吉田沙保里でどうでしょう」という、時流に乗っただけの提案メールが来たので「いや、山瀬まみでお願いします」と手厳しく返信した。何たってこちらは古本屋でたまたま手に入れた、山瀬まみが20歳の頃に記したエッセイ集『安売り王女さま』に没頭しているところで、これがとにかく読ませるのである。マリオの衣装を脱ぐのがちょっと早すぎたのでは、などと細かな指摘を連ねて、時流に乗っている場合ではない。
山瀬は好きな男性のタイプについてこう書く。「眼鏡をとった、所ジョージさんの顔が、かなりいい線だと思う。疲れた目をしてる。じっさい疲れているんだと思うけれど。いまにも危ない世界へ飛んでいってしまいそうで、シャツのすそつかんで、いっしょに飛ぼうかなと思う」。好き、の表現がとても素敵だ。そんな山瀬はレスリングの恰好が許せないらしく、特に男が「お尻とお尻のあいだに汗をかいているのがいや!」と言い切っている。唐突に、魚肉ソーセージを食べるのが好きだけど、他人が魚肉ソーセージを食べているのは見たくないという理不尽な通告をしたと思ったら、野球を「なんとなく始まって、いつの間にか終わってる」から嫌いとする清々しさ。思ったことをそのまま書く筆致が気持ちいい。
「おとなびていない子どもなんて、いないはずなんだ」
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。