PASSPO☆と音楽とマンガと絵があれば生きていけます
—— 両親や兄弟の影響でマンガを好きになる人も多いんですけど、増井さんのマンガ体験にもそういう部分はありますか?
増井みお(以下、増井) 小っちゃい頃にお兄ちゃんがマンガを読んではいたけど、その時は字がまだ読めないくらい幼かったんです。その後、自分で初めて買ったマンガがあって、『うちゅう人田中太郎』っていうギャグマンガなんですけど、それがきっかけで本格的にマンガって楽しいなと思うようになりました。最初は誰にでもウケるような分かりやすいマンガしか読んでなかったです。
自分でマンガに興味を持って、さらにマンガを描くようになってから、少女マンガの世界に入ったんですね。だから、お兄ちゃんの持ってたマンガは読んでないです。でも、お兄ちゃんもすっごいマンガが好きなので、みおが最近になってこういう趣味になってからは、マンガの話をしたり、貸し借りしたりするようになりました。
—— お兄ちゃんが読んでたのは少年マンガですか?
増井 そうですね。『名探偵コナン』『鋼の錬金術師』とか、あとは『クローズ』みたいなヤンキーマンガが多かったです。唯一お兄ちゃんが持ってたマンガで読んだのは『RAINBOW』です。。昔の時代の少年院の話で、少年たちがすっごい拷問を受けたり、ゴミみたいに扱われたりして、結構グロかったんですけど。
—— お母さんはマンガを読むことに関しては何も言わなかった?
増井 はい。母親がデザイナーで絵を描く楽しさを知ってる人なので、みおが宿題の下に紙を敷いてマンガを描いていても怒らなかったし、マンガを爆買いしてもぜんぜん怒らなかったですね。好きなことをやって欲しいって母にはずっと言われてたので。
—— では次に、増井さんが最近お気に入りのマンガを何作か紹介してもらいましょう。まずは『モブサイコ100』。
増井 これは最近ハマったんですけど、超能力を使う男の子の話で結構ギャグ寄りなのかな。ほんとに面白くて、そのなかでも一番面白いのが戦いのシーンなんですよ。モブっていう男の子に師匠がいるんですけど、その師匠は詐欺師で、モブには超能力者って嘘ついて弟子にしてるんです。その師匠と弟子のやり取りも面白くて。私自身、超能力みたいなSFっぽいのにハマったことがないんですけど、これはページをめくるごとにプッて吹き出しちゃうようなマンガです。
—— そして、『ソラニン』。
増井 浅野いにおさんのマンガ、今日どれを持ってこようかすごく迷ったんですけど、やっぱり『ソラニン』にしました。人が亡くなる話ってずるいなとは思うんですけど、ここにはすっごい愛情が描かれていて、しかも私は音楽が大好きだから、最後に主人公が亡くなった人のギターを弾きながらライブで披露する——あの温かさにグッとくるんです。
浅野さんの作品は全作品好きですね。この方もどこか悲しい気持ちにさせるようなマンガを書くので、すごくいいです。一番最初に読んだのは『うみべの女の子』っていう作品でした。これも切ない恋愛系の話なんですけど、絵もきれいで背景も細かく描かれてるので、そういうところも含めて大好きです。
—— 最後が『臆病の穴』です。
増井 今イチ押しのマンガ家さんが市群アル仙さんなんですけど、この『臆病の穴』がきっかけで惚れました。オムニバスというか、1話ごと違うお話になっています。第4話の「めしあがれ」は、男の子2人が意中の女の子から「夕飯作るから、いっぱい食べてね」って言われて、その子が出してくれた料理を食べるんですけど、そのお皿は空なんですよ。でも、食べてあげないとすごく悲しむから、ひたすら食べたフリをする。それが続いて最後には……っていうお話なんですけど、独特な世界観ですよね。ちょっと悲しい結末が多いのかな。ご本人が書いてらっしゃったんですけど、手塚治虫先生がすごく好きらしくて、ちょっと丸っこい感じの絵とか似てるんですよね。キャラクターも可愛いですし、描写も細かくて美しいです。
—— やっぱり一度読んだだけでは分からないような世界観が好きなんですね。
増井 印象深いお話が好きですね。ただ悲しいから好き、とかじゃなくて。不思議だなあ、みたいな。悲しくなりたいから読むのではなく、新しいことをしてる衝撃とか、この人にしかできないから凄い!っていう感動を味わいたいのかも。刺激が強すぎるマンガが好きですね。
—— マンガとアニメは違います?
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