みなさん今年の夏休みはどうでしたか? 今回のパリジャン十色では堅苦しいお話はお休みして、パリのバカンス体験を紹介してみようと思います。
もともと仕事をするのが嫌で、いかにサボるかを考えがちだった私にとって、フランスの長いバカンスは願ってもないもの。移住してはじめての夏は最高に楽しめるに違いない! そう思っていたのですが、実際には楽しむどころか、気が狂いそうになるほど苦痛でした。
はじめてのバカンスで発狂寸前?
一人当たりの平均バカンス期間が3週間近くもある国、フランス。世界的にもフランス人は働かないことで有名で、多くのフランス人が「仕事=罪」と本気で思っています。そんな彼らにとって、夏は一年のうちで一番楽しみな季節です。
7月半ばごろになると途端に旅行に出るパリジャンが多くなり、毎日騒がしかったパリがすっからかんになります。排気ガスをふりまく車やバイクの数も激減し、道路は歩行者天国なみにガラガラ。日々の食料を調達するパン屋も閉店。マルシェの店も半分近くがなくなるわで、仕方なくスーパーのしけた野菜や肉を食べる生活を余儀なくされます。その頼みの綱のスーパーですら、この時期を利用して改装閉店を決めこむこともあり、ならば、と向かった馴染みのアジアン・レストランも「3週間お休み」の張り紙がされ、この街全体から拒絶された気がして途方に暮れてしまいます。
まるで、「パリに居残っているお前が悪い!」と言わんばかりに、電気、ガス、水道を残し、ほとんどすべてのものが停止してしまうのです。実際、パリに居残っているのはバカンスに行けない貧乏人と、世界中から集まった観光客のみというのはパリでは有名な話です。
その「貧乏人」であるところの私とフランス人の旦那さんは、この時期しっかりパリに居残っていました。旦那さんはテレビの前のソファーに陣取り、夏の風物詩である自転車の祭典「ツール・ド・フランス」をダラダラ観ては、ウトウトするだけの毎日。たまに彼の実家に一緒に帰っても、庭でバーベキューをし、肉の固まりをたらふく食べて、これまた家族そろってソファーでゴロゴロしながらツール・ド・フランスを観ては昼寝をするだけ……。
こんなにダラダラするだけの夏休みなんて信じられない!と日本から来たばかりの私は思ったのですが、どうやら彼らは、この「何もしない」ということ自体を楽しんでいるようなのです。それは旦那さん家族だけでなく、パリに居残ったほかのパリジャンたちも同じように見えました。しかし、この何もしないことが、徐々に私を蝕んでいくのでした。
想像してみてください。週末にただダラダラ過ごしてしまい、日曜日の夜になんだかものすごく損したように感じるあの気持ちを。これが一ヶ月近く毎日続くわけです。いくら仕事嫌いの私といえど、さすがに焦りました。「仕事をしないこと」「何もしないこと」に対する罪悪感が半端なく押し寄せてきたのです。このとき、私の身体には日本人の習慣として「仕事しない=罪」という考えが染み付いていることを思い知らされました。
はい、ここでこれまでの連載でお伝えしてきたように、私は「こんな生活でいいんだっけ?」と自問自答してみました。すると即答で「NO!」という答えが出ました。しかし、かといって何をしたらいいかも思いつかない。もう発狂寸前です。結局、1年目のバカンスは何もできず流されるままダラダラし、しかし心はずっと休まらず、重苦しい時間を過ごしただけで終わってしまいました。
有意義な夏休みを過ごす方法
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