相撲大会にロボット、モノマネ企画にニワトリ……というズラし方

『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆タレント名鑑』などを手掛ける人気プロデューサー・藤井健太郎さんの作る番組は、どこか悪意のある演出が特徴的。発売2週間にして早くも2万部をこえた話題の著書『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)のなかで語られた”ズラしの手法”には藤井さんのこだわりがたくさんありました。

芸人さんがいくら面白いことを言ったりやったりしていても、行き先がきちんと示されていない番組は、意外と見ていられないことが多いです。

何かしらのゴールに向かいつつ、その道中に面白いことが起きていないと、ある程度の時間を継続して見るモノとしては辛いんだと思います。

だから、自分の番組では、『クイズ☆タレント名鑑』だったらクイズの答えを出す、『水曜日のダウンタウン』だったら説を検証する、という道筋と一応のゴールを作るようにしています。

入り口と出口がちゃんとあって、その過程でどう脱線していくか。このやり方が最もベーシックなお笑いバラエティの作り方なんじゃないでしょうか。

そんな中で、基本の形を作りつつ、ちょっとハミ出した、ズラしたモノを混ぜるのが僕の好きなパターンです。

例えば、『クイズ☆タレント名鑑』に「史上最大ガチ相撲トーナメント」という企画がありました。

大相撲が八百長事件の影響で本場所の開催を中止した2011年、「本家がやらないんだったら、俺たちがやる!」というコンセプトのもと、なぜかクイズ番組内で行われた相撲大会です。

プロレスラーや格闘家、筋肉自慢の芸人など、豪華なメンバーたちに出場してもらいましたが、ストレートに強そうなメンバーが並んでいると、その中に変化球がほしくなります。そこで、第2回大会には〝相手に触れずに人を投げとばす気功の達人〞柳龍拳先生を。そして、第3回には〝二足歩行ロボット〞のHAJIMEロボット号をトーナメントに入れました。

第3回のロボットは、ズラしたパターンのいいアイディアはないか......と粘って考え、大会収録の1週間くらい前にふと思いついたネタです。最初はASIMOを思いついたけれど、もちろんNG。最終的には「ロボットならなんでもいいや」と、件のロボットになんとか出てもらえた形です。テレビの企画なので、そこに厳密なルールはありません。

あくまで面白いことが優先です。

だから、人間の相撲トーナメントにロボットが出ちゃいけない理由もないわけで。そういう意外性は大事にしています。

同様に、街行く人に「何かモノマネをしてください」とお願いして、モノマネされた人から帰れるという企画「モノマネされるまで帰れません!バスツアー」では、芸人さんを中心に、モノマネされがちなボビーや阿藤快さんといったタレント、さらに『クレヨンしんちゃん』の声優、矢島晶子さんやショッカーが並ぶ中、メンバーにニワトリを入れました。

メンバーに入っているのは意外に見えるけれど、一般人に「何かモノマネを」と言ったときに、ニワトリのマネが出てくることは実はそれほど意外ではない……という絶妙なバランスだったと思います。

案の定、ニワトリは中盤でモノマネされて帰宅していきました。

人間に別のモノを混ぜるという意味では、怪談のオチの「お前だー!」の言い方を競った 『水曜日のダウンタウン』の企画「お前だー選手権」でも同様のパターンを使いました。

大仁田厚さん、水木一郎さん、X JAPANのToshIさんら「お前だー!」の上手そうな人たちに出場してもらいましたが、実は、このとき喪黒福造にもオファーを出していました。仮で『笑ゥせぇるすまん』の映像に怪談を乗っけたらかなりのハマり具合だったので、実現したらきっと優勝していたと思います。

さらに、入社2年目で、初めて自分がプロデューサー兼総合演出として担当した『限度ヲ知レ』でも、こういったズラしの手法を使っていました。

番組のコンセプトは、「常識と非常識の境界線」の検証。街に出て、いろいろな物事の「許される限度」をドッキリ風に調べていくクイズ形式の番組です。

そんな中、番組では「ペット入店可の店はどんなペットまで入店OKか?」という検証を行いました。まずは、イヌからスタートして、だんだん動物のレベルを上げ、結果、ヘビで店からNGが出たんですが、その先に「じゃあ、サルがイヌを連れてきたら?」というオチを作りました。

もちろん、入店OKもクソもないんですが、チンパンジーが小型犬のリードを引いて入店してくる様と、それを見て店員さんが「あれ......どこから来たの......」と困惑する様子は、なかなかの面白さでした。

また、ロケは行ったものの尺の都合でオンエアには至りませんでしたが、「双子の区別の限度」では、どれだけ関係性が近かったら「双子が入れ替わったことに気づくか?」を検証。友 達、恋人、父親......ときて、オチは写真を加工しての「本人」でした。

どちらのネタに関しても、会議の席でオチの部分は自分が発案したことを覚えています。「ズラしたモノを入れたがる」「オチを作りたがる」という発想は今と全く変わっていなかったようです。

まあ、入社2年目でこれくらいのことが思いついていたことに関しては、我ながらまあまあやるじゃねーかとも思います。

『クイズ☆タレント名鑑』のクイズでは、その問題の出し方、配球で遊ぶことがよくありました。

クイズという基本があるから、問題でズラすのは意外に簡単です。

顔は見たことあるけど、名前がなかなか出てこない有名人の名前を当てる「有名人!この人誰だっけ?クイズ」では、初回の特番で元オリンピックレスラーのマット・ガファリが大盛り上がり。誰も答えられなかったことに加え、その写真やエピソードの絶妙さで番組全体の大オチになりました。

そこで、2回目の特番でも「この人誰だっけ?クイズ」には、初回のガファリのような絶妙なラインでオチになる人物を探しましたが、これがなかなか見つからない……。そこそこ良い人がいてもガファリに比べたらちょっと弱いし、本当は2回目なので1回目より上がってなきゃいけない......。

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悪意とこだわりの演出術

藤井健太郎

『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆タレント名鑑』など、数々のバラエティ番組を手がけるTBSプロデューサー・藤井健太郎氏。テレビ界、最注目プロデューサー初の著書『悪意とこだわりの演出術』で語られた、あの芸人の凄さのヒミツ、こだわりの演出...もっと読む

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コメント

kohashi 「織田織田小木小木織田小木小木」 > 3年以上前 replyretweetfavorite

satokoichi これ読んで、何をどうすると高橋ジョージにロード限定イントロクイズをやらせようって企画に至るのかわかった、気がする| 3年以上前 replyretweetfavorite

u5u “基本の形を作りつつ、ちょっとハミ出した、ズラしたモノを混ぜるのが僕の好きなパターン” 3年以上前 replyretweetfavorite