天才のつくり方

第17回】日本にはまだ、ある「幸せ」が訪れていない。

「海外に目を向ける事で気付く幸せもある」そう語る北川さん。その論点をきっかけに、話題は「思考の抽象化」にまで発展する。日本人は子どもの頃から、抽象的な思考をする訓練を受けてこない。それは大学受験の試験問題にも表れていて−−。

「変な芋虫がいるから、茂木くんを呼ぼう」

北川 ユニークさがどこから生まれるのかというと、僕は組み合わせからだと思うんです。好きになれる物事がこの世の中には1000個あったとして、それを10個選んで組み合わせたら、そのパターンは膨大な数になる。そこに個人のユニークさが表れる。でも、その1個1個の物事には、誰もが好きになる可能性、ユニバーサリティが存在するんじゃないでしょうか。

茂木 いろんな人がいるけれど、その人が持つ一つひとつの要素には汎用性がある。なるほど、それがダイバーシティの中にユニバーサリティがあるって考え方ね。

北川 あくまで僕の考えですけど。

茂木 それはそうかもしれないね。でもおれは、ユニバーサリティよりも、個人の来歴が大事だと思っているんだ。おれ自身のことを言うと、あるときから自分が変わり者、少数派だってことを受け入れてるから。だから、英語で発信する必要性も含めて、全部個人的な問題だと思ってるんだよ。

北川 お、そうなんですか。僕はあんまり自分が変わり者だっていう自覚がないんですよね……。いたって普通だと思ってるんですけど、茂木さんはなにか、自分が変わっているって気づいたきっかけがあったんですか。

茂木 いや、北川はぜんぜん普通じゃないと思うけど……まあいいや。おれは子どもの頃から、虫捕りが好きだったからかな。いやーだってさ、クラスメイトから「庭に変な芋虫がいたから、茂木くん呼ぼう」って、わざわざうちに電話くるんだもん。もう、完全に「虫の人」扱い。

北川 芋虫がいたから呼ばれるって! めっちゃおもしろいですね(笑)。

茂木 もうおれはそのときから、虫の人でいいやって思ったの。「ユニークさは組み合わせだ」って、さっき北川は言ってたじゃない。それは本当にそうで、組み合わせによっていろんな人がいるから、全員が英語を使えるようになる必要もないし、ハーバードに留学する必要もない。グローバルなネットワークに対応できない人は、日本だけじゃなくて、アメリカにもイギリスにもいるんだと思う。
 でも、日本の不幸は、ベスト・アンド・ブライテストといわれる人たちが、世界に開かれたネットワークで活動しようという方向にあまりいかないことだと思うな。

北川 うーん、海外に目が向かないことによって何が問題かというと、日本という一つの国・文化・価値観から抜け出ることで得られる、思想の豊かさに気づけないことだと思います。だからこそ、今はまだ日本にない幸せのかたちがあるのではないでしょうか。

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天才のつくり方

茂木健一郎 /北川拓也

日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。 ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む

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コメント

ikojun "自分の考えが、世界に広がっていろいろな人とつながれる喜び。" http://t.co/jikQ96kQBE 5年以上前 replyretweetfavorite

sadaaki 「芋虫がいたから茂木くん呼ぼう」ってすごいw ハーバードは文明であるという話もおもしろいです。 6年弱前 replyretweetfavorite

noramidorami 「変な芋虫がいるから、茂木くんを呼ぼう」って呼ばれるこども時代,いいなあ.|cakes(ケイクス) https://t.co/ErkY83kHxK 6年弱前 replyretweetfavorite

tiankou 手塚治虫?、、、茂木治虫  6年弱前 replyretweetfavorite