宮崎夏次系さんの作品は、読み終わった後にモヤモヤするけど、大切な何かを教えてくれる
ホラー映画(特にゾンビ映画)が大好きなPASSPO☆ 増井みおは、マンガの趣味も一風変わっていて、王道の少年マンガや少女マンガではなく、独特な作風の青年マンガをたくさん読むという。今回は彼女のマンガ体験を掘り下げつつ、そのアーティスト性みたいなものにも触れられればと思う。
—— 過去にマンガ家さんにファンレターとか送ったりしたことってあるんですか?
増井みお(以下、増井) ファンレターは書いたことあります(笑)。小学校の頃、『浦安鉄筋家族』が大好きで、作者の浜岡賢次先生に向けて書きました。返事は来なかったんですけど。
—— お手紙の内容、覚えてます?
増井 好きなキャラクターや面白かったエピソード、「このマンガは自分の生きる糧になってます」みたいなことを書いた気がします。「私もマンガ家目指してるんです!」って。
—— 当時からマンガ家になりたいと思ってたんですね。
増井 なりたいと思ってました。
—— じゃあ、宮崎夏次系先生の作品から聞かせてもらおうと思うんですけど、ファンになったきっかけのマンガは?
増井 最初は『僕は問題ありません』でした。表紙を見て、ジャケ買いみたいな感じで購入したんですけど、1話目の「線路と家」がほんとに切なくて。おじいちゃんと2人で住んでる女の子の話なんですけど、学校を辞めた女の子と男子高校生、それからおじいちゃんの関係が不思議に描かれていて、現実ではありえないような高いところに電車が通っていたりとか、リアルなところと非現実的なところが入り混じってるんです。そのなかに家族愛とか哀愁とかあったりして、読み終わった後にモヤモヤするお話が多いですね。でも、すごく大切なことを教えてもらえるし、人を大切にしようとも思える作品です。絵も好きで、絵もストーリーも両方虜になりました。
—— それって感情で表すとしたら、どんな感じなんでしょうね。
増井 けっしてイヤな気持ちにはならないマンガなんです。普段は感じられない寂しさとか悲しさみたいなのが表現されていて、とにかく感情がたくさん湧き出てくるような作品ですね。
—— それは今まで読んでたマンガにはなかったものなんですか?
増井 ないですね。
—— この作品の前作にあたる宮崎先生の『変身のニュース』だと、印象に残っているエピソードはありますか?
増井 第3話の「昼休み」です。工事現場で働いてる男の子の話なんですけど、この子がもう何もかもがイヤになって、縄を持ってトイレに行くんですよ。現場からちょっとだけ離れたところにトイレがあって、不思議なことにトイレの横にヤシの木があるんです。で、このヤシの木に縄を吊り下げて、自殺しようとするんですけど、なかなかできない。そこに仕事仲間の女の子がやってきて、その子とのやり取りがあって……っていう話がすごく好きです。
—— 増井さんは自分でイラストも描くから、絵のテイストにも惹かれるものがあったんじゃないですか?
増井 はい。私、普通に女の子とか男の子とか描くんですけど、宮崎さんの場合はすごく独特なキャラクターを描くんですよ。例えば、お兄さんの兄弟がいるエミリっていう女の子がいるんですけど、すっごい独特な女の子なんです。お兄ちゃんたちは普通の人間なんですけど、エミリだけちょっとヘンな桃みたいな形をしていて。それが日常で喋るんですけど、こういう発想って普通はできないです。日常の中に非日常を取り入れている感じが好きですね。
—— 想像力を刺激するマンガ家さんなんですね。
増井 宮崎さんにしかない世界観が本を読めばすぐに分かるので、とても想像力が豊かな方なんだろうなって思います。
—— マンガに漂ってる雰囲気みたいなものって、増井さんは結構気になるタイプですか?
増井 そうですね。ただ絵が可愛いからとか、ただ話が面白いからというよりは、全体的に惹かれるかどうかをすごく見ちゃいますね。
—— そういうふうにマンガを楽しむようになったのは、いつ頃から?
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