美大は技術を教えてくれない
片桐仁(以下、片桐) ほんと、美大って驚くほど技術教えてくれない。予備校のほうがよっぽど丁寧に教えてくれますからね。どの美大に行っても同じ目に遭いますよ。だから、要は心構えなんだよね。
かっぴー 「自分を信じる」って、「俺は絶対こうなるんだ!」と信じて疑わない心を持つということですよね。
片桐 あととにかくやりつづけること。僕は今、雑誌の連載用に一ヶ月に一個粘土で嘘のオーパーツ制作してるんだけど、それだけで結構精一杯なの。前に最初連載していた雑誌が休刊して、『フライデー』で再開するまで8ヶ月間、ひとつも作らなかったもん。だから締め切りがあるというのはいいことだよね。ほんっとにやらないんだもん。じゃなきゃこれを17年続けてこられなかった。
かっぴー 美大では、先を見据えた意識の高い人だけが自主制作をやるんですよね。でも4年間作品を作りつづけても、それじゃ全然足りない。広告業界志望だとなおさらなんです。普通に学校の勉強だけしていると、広告の課題って3年生から始まるんですよ。
片桐 ほうほう。
かっぴー 3年生で始めても、就活の時期までに作れるのはせいぜいポスター2、3点程度なんです。やる気をアピールするなら、たくさん作ったほうがいいんですけど。
片桐 ま、でも、ぶっちゃけあんまり関係ないよね(笑)。「俺は絶対こうなるんだ!」と思って必死で取り組んで、ダメになった経験がたくさんあったほうがいいだろうし。
かっぴー 美大は、常にクリエイティビティを発揮している変わったタイプの人が集まるので、最終的に何かにはなっていく気はします。
「いつが勝負どきか」なんて後からしか分からない
片桐 僕は今42歳なんですけど、40代って危険ですよ。みうらじゅんさんも言ってますけど、「サブカルは40代で鬱になる」から。
かっぴー 各年代で「今が勝負だ」というのがあるじゃないですか。僕はまだ30代なんですけど、振り返って片桐さんの人生の中で「あれが勝負だったな」というのはありますか?
片桐 それは、後々になってから実感することだと思いますよ。あの時は逃げてたなとか、もっとあそこでアピールしておけばよかったなとか。僕は美大を卒業する時、「お笑い芸人として名前を売ってから芸術の道に進んだほうがいい」と小賢しいことを考えたりもしてた。で、20代後半から30代までは年収も増えて、モテるようになって、すっかり天狗になっちゃった。
かっぴー そうだったんですか。
片桐 それで、30万円だった年収がガーっと増えたころ、「あっ」と意識が変わる瞬間があった。他にも、出会いや結婚して子どもが生まれたりといったライフイベントのひとつひとつがきっかけになっているんじゃないかな。
かっぴー ご結婚はいつですか?
片桐 29歳の時です。
かっぴー 美大卒にしては早いですね! 美大出身者って就職もしないけど、結婚もしないんですよね。
片桐 周りも結構してないね。半分くらい独身なんじゃないかな? 47、8歳の友人はもうヤバいかも?(笑)お笑いでも、「結婚とかすげえつまんねー」みたいな考えがあるから、未婚が多いんですよね。
かっぴー 「は? 何堅実な家庭を築いてんの?」みたいな感じですよね(笑)。
片桐 本当は家庭を築こうが何しようが、関係ないんですけどね。でも、42歳の今になっても、20代の時に抱えていた悩みはまだ解決してない。
かっぴー え、どんな悩みですか?
『左ききのエレン』のテーマは「コンプレックス」
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