ここは東京、西新宿。医療器具メーカー・ドブ板メディカル株式会社からボロボロの姿で出てくるのは、監査部の瑠雨図(るうず)さんです。
瑠雨図さん「うぅ……あの野郎、いつか殺してやる……」
瑠雨図さんがピュアな殺意を燃やすのは、同じ部署の路地さんです。路地さんは、ドブ板メディカルのアレでナニな内部監査機能をアレするために、金で雇われた会計士の男です。
瑠雨図さんはすこしまえに監査部に異動してきたのですが、この路地さんにたびたび詰められまくっていたのです。
瑠雨図さん「最初来たとき、ちょっとでもいい男だと思ったのが悔しい……うぅ……もっと楽な仕事がしたい……」
呪詛のようにつぶやきながらおうちに帰ると、瑠雨図さんはバタリと倒れこむように眠りについたのでした……。
気づくと瑠雨図さんは、ふわふわとした雲の上のようなところにいました。
瑠雨図さん「ここは……?」
瑠雨図さんがあたりを見回すと、目の前には大きな壁があり、それはどこまでも続いているようでした。
???「ここは、ゆるふわの彼岸」
瑠雨図さん「!?」
後ろから声がして、振り返るとそこには、
瑠雨図さん「ずんずん先生?」
ずんずん先生は、社会人がかかるという謎の奇病、社会人病を専門とするメンヘラ産業医です。なぜかドブ板メディカルに常駐していました。
でも今日のずんずん先生は、いつもの白衣ではなくて、なんだかふわふわした白いバスローブのようなものを着ていました。
???「私はずんずん先生とやらではない。私は万能の神様。ちなみにこれはバスローブではなくて、神様ルックだからそこんとこ覚えておくように」
瑠雨図さん「え? あ? すいません」
瑠雨図さんは、素直にぺこりと頭を下げました。
万能の神様「お前の心の願いを聞いて私は現れた」
瑠雨図さん「私の願い?」
万能の神様「寝るときにもっと楽な仕事がしたい、ゆるふわっとそれなりのお金をもらってちやほやされたいと言っていただろう」
瑠雨図さん「そこまでは言っていませんが……」
ふぅっと瑠雨図さんはため息をつきました。
瑠雨図さん「でも、もっと楽な仕事があるんじゃないかなって思うのは確かです」
万能の神様「ふむ……ではあれをみてみろ」
そう言いながら、万能の神様は遠くを指差しました。
目の前の壁は万里の長城のようにどこまでも続いており、万能の神様が指差した先には、二つの扉がありました。
一つの扉にはすごい人だかりがあり、みんな他人を押しのけてでも扉を開けようとしていました。一方もう一つの扉は人気がなく、誰も近寄らず、誰も開けようとしていませんでした。
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