団結」と​「癒やし」がはじまった民主党

ヒラリーが民主党の推定指名候補になってからも、依然として頑固に戦おうとしたサンダース。そのサンダースもとうとうヒラリーと手を取り合ったそうです。その重要な瞬間のイベントに、渡辺由佳里さんが足を運びました。
アメリカ在住の作家・渡辺由佳里さんによる、アメリカ大統領選のやじうまレポートをぜひお楽しみください。

今回は、7月12日にサンダースが公式にヒラリー支持を発表した民主党のイベントに足を運んだんので、その現場の様子と共に、民主党の今をお届けする。

その前に大統領選挙の現在の状況を整理しよう。
「予備選」が終了したら、次のステップは「党大会」だ。共和党サイドは、今週7月18日からすでに党大会が始まっており、来週には民主党大会が開催される。その後、それぞれの党指名候補による「本選」が本格的に始まり、11月8日に全米で投票が行われる。

党大会では代議員による投票があるが、これまで説明してきたように、ほとんどの場合は儀式的なものだ。通常の党大会は、党の指導者や有名人を招いて指名候補を盛り上げるお祭りの要素が強く、指名候補を国民にPRする重要なイベントでもある。

ところが、今年の予備選は共和党も民主党も意外な展開になり、勝敗が党大会まで持ち込まれる可能性も囁かれた。結局は、予想外に好戦したトランプが初期に推定指名候補の座を確実にした。共和党大会の初日には反トランプのグループが抗議運動をして荒れる場面もあったが、無事に共和党の指名候補になった。

多くの政治評論家にとって意外な展開になったのは、予備選が終わってもサンダースが敗北を認めなかった民主党のほうだ。そのために、ヒラリーは本選への移行がなかなかできずにいた。しかし、その民主党も7月12日にサンダースが公式にヒラリー支持を発表して党大会までに一応の決着がついた。

党大会が荒れることを恐れる民主党

上に書いたように、通常の党大会は候補のPRが最大の目的だ。だが、特に今年の民主党大会の場合には、敗北したサンダース支持者の心の傷を癒やし、党を団結させるという重要な役割がある。

どの予備選でも心の傷や党内の亀裂は起こる。
オバマとヒラリーが戦った2008年の予備選のほうが、ある意味今回の予備選よりも熾烈だった。両陣営は、最初は礼儀正しく政策の違いだけを討論したが、予備選が進むうちに人格攻撃的な要素を帯び、候補者のみならず支持者たちに深い心の傷と強い憎しみを与えた。 予備選終了時点で、ヒラリーの支持者の39%は「オバマには投票しない」と答えた。なんと17%は「(共和党候補の)マケインに投票する」とまで言ったのだ。

2008年で苦い体験をしたヒラリーは、2016年での予備選ではサンダースへの個人的な攻撃をあえて避けた。けれども、情熱的なサンダース支持者からの個人攻撃を逃れることはできず、選挙ラリーや演説で抗議デモや野次の妨害を受けた。ネットでも「信用できない」「犯罪者」と叩かれ、ヒラリーは好感度が非常に低い「推定指名候補」になってしまった。

サンダース支持者の攻撃の的になったのはヒラリーだけではない。民主党そのものが「ヒラリーびいきの不平な選挙(出来レース)をしている」、「99%の庶民よりも大企業寄りの政策を取っている(金で買われている)」といった批判を浴び、ネバダ州の党大会では不満を抱えるサンダース支持者が暴動を起こすという事件まで発生した。

そんな険悪な雰囲気は「正義の暴力がアメリカ中を揺らしている」にも書いたが、今年の予備選で民主党が負った傷は8年前よりもずっと深い。予備選の勝敗が明らかになった後でもサンダースが敗北を認めず、ヒラリーを公式に支持せずにいたことも、民主党の傷の回復を遅らせていた。

7月25日からフィラデルフィアで4日間続く民主党大会では、サンダース支持者が押し寄せて抗議デモをするだけでなく、党大会を乗っ取ろうとするのではないか、という恐れも強まっていた。ネットには、実際にそんな呼びかけが見られた。

サンダースがようやくヒラリー支持を発表

そんな緊張が続くなか7月12日にヒラリーとサンダースがニューハンプシャーで共同イベントを行った。この時点ではまだサンダースはヒラリーを支持していなかった。ゆえに、メディアは「このイベントでサンダースがヒラリー支持を発表する」と予想した。このイベントが注目されたのはそれだけではない。民主党の癒やしと団結の可能性を測る試金石であり、2週間後の党大会での荒れ方を予測する予備テストでもある。それを、現場で確かめてこようと思い立ち足を運んだ。

ちなみに、今回の民主党イベントの荒れ方は2003年から政治イベントに足を運んでいる私が覚えている限り初めてのことだった。 同じニューハンプシャー州で2月に開催された民主党のイベントでは、「サンダース旋風の裏にある異様なヒラリー・バッシング」に書いたように、若いサンダース支持者による妨害が著しかった。また、「正義の暴力がアメリカ中を揺らしている」にも書いたように、予備選後半の5月には、サンダース支持者によるヒラリーのイベントの抗議がさらに過激化していた。

恐る恐る午前6時前に会場に到着してみると、プラカードを持って立っている集団はどこにも見かけない。「Never Hillary!(絶対ヒラリーには投票しない)」「Bernie or Bust!(バーニーでなければ破壊)」と断言するサンダース支持者が列の先頭に並んでいたが、一緒に記念写真を撮ったり、大声で喋っているだけだった。

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アメリカ大統領選、やじうま観戦記!

渡辺由佳里

みなさん、2016年は4年に一度の祭典、オリンピック!ではなく、いいや「アメリカ合衆国大統領選挙」の年です。世界情勢にもつよい影響をおよぼす、オバマ大統領につづく大統領は誰なのか? アメリカ在住の作家・渡辺由佳里さんが、このビッグイベ...もっと読む

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コメント

consaba 渡辺由佳里 #ss954 #radiko 約1年前 replyretweetfavorite

jsin5 あれだけ全力でケンカしてきたのに、すぐに仲直り出来るのマジで凄い。 1年以上前 replyretweetfavorite

sizukanarudon 【前編】 渡辺由佳里@YukariWatanabe https://t.co/byyioKL0yM 民主党の癒やしと団結の可能性、そして未来への希望だった。 7月18~21日:共和党大会 7月25~28日:民主党大会 11月8日:投票日 1年以上前 replyretweetfavorite

YukariWatanabe サンダースの熱狂的支持者はソーシャルメディアで「ヒラリーの支持者は金で買われているだけ。その証拠に情熱がない」とよく揶揄するが、実際にイベントに行けば情熱的だとわかる(ビデオつき)> 1年以上前 replyretweetfavorite