「緩やかな金利上昇なら業績に大きな影響はない」
銀行関係者の多くは今、そう口をそろえ、表向きは冷静さを保っているように見える。
大胆な金融緩和策によって、インフレへの懸念が高まり、長期金利が上昇(債券価格が低下)しても、そのペースが緩やかであれば、保有株の売却などで債券の損失を賄えるとみているからだ。
その一方で、バランスシートの中で膨れ上がった国債を横目に、金利変動の最悪のシナリオを想定し、対応策を練り直すなど警戒感を強める様子も見え始めた。
最悪のシナリオとは、2003年の「VaRショック」の再来だ。VaRは、バリュー・アット・リスクの略。金利変動の際に想定される債券などの最大損失額をはじき出し、運用の指標とするものだ。多くの銀行がリスク管理の手法として採用するため、金利変動によって各行ともいっせいにVaRの基準に引っかかりやすく、含み損の拡大を防ぐための強制的な売却が、さらなる売りを呼ぶ展開になりやすい。
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