『プレゼンの極意はマンガに学べ』刊行記念 三田紀房インタビュー

いまやビジネスシーンにおいて欠かすことのできない存在となった、プレゼンテーション。しかし、Powerpoint の使い方はわかっても、おもしろいプレゼン資料のつくり方に悩むビジネスマンは多い。そこで今回、まったく新しいプレゼンの教科書として刊行されたのが『プレゼンの極意はマンガに学べ』(三田紀房/講談社)だ。マンガの構造を知り、マンガのテクニックを駆使すれば、プレゼンスキルは劇的に向上すると断言する三田紀房さん。その真意を語っていただいた。

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プレゼンの「型」はどこにある?

— 今回は『プレゼンの極意はマンガに学べ』、刊行おめでとうございます。

三田 ありがとうございます。  

— 本書のテーマは「プレゼン」です。現在、企業から教育現場まで、さまざまな分野でプレゼン能力の重要性が語られています。そこに対して、本書のアプローチは斬新ですね。

三田 そうですね。Powerpoint や Keynote といったプレゼンテーション用ソフトが普及し、アル・ゴアやスティーブ・ジョブズらのプレゼンが話題を呼んだこともあって、最近では多くのビジネスマンがプレゼンに力を入れています。でも、9割以上のプレゼン資料はつまらない。  

— どこが問題なのでしょう?

三田 いちばん問題に感じるのは「型」の不在です。僕もさまざまな代理店や企業の方々からプレゼンを受けてきましたが、プレゼン資料の仕様から構成、それに分量まで、見事に各社バラバラなんですね。要するに、「プレゼンとはこういうものだ!」という雛型が存在していない。ルールが共有されていない。だからプレゼンされる側も、その資料になにが書かれていてどこが重要なのか、さっぱり理解できない。  

— たしかに。

三田 企画もプレゼンも、最終的にビジネスとして実現しないと意味がないんです。厳しい言い方かもしれないけど、どんなにがんばってつくったプレゼン資料でも、契約に至らなければ価値はない。マンガも同じですが、「がんばり」にお金は発生しません。だから、「型」を知らないまま何時間もかけてつまらないプレゼン資料をつくっているのは、時間と労力の無駄なんですよ。  

— 三田さんは常々「おもしろいマンガには型がある」とおっしゃっていますね。

三田 はい。これはマンガに限らず、小説でも映画でもなんでも同じだと思いますが、理由もなく「おもしろい」なんて原則としてありえないんです。「おもしろい」には必ず理由がある。プレゼンだって、きっとそうでしょう。人を魅了するプレゼンにはなんらかの理由があるし「型」がある。僕はそう思っています。

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マンガ家は毎週読者にプレゼンしている

— そこで「プレゼンの教科書としてマンガを使え!」というのが、本書のメッセージですね。

  三田 マンガとプレゼンって、共通項が多いんですよね。どちらも文字とビジュアルを組み合わせたメディアだし、ページをめくるときの驚きや快感があるし、読者(クライアント)の心を揺さぶる仕掛けが必要だし。それで、マンガの「型」をプレゼンに応用することができたら、おもしろいことになるんじゃないかと思ったんです。  

— たしかに、本を読ませていただいて目からウロコの話が連続でした。

三田 たとえば新橋あたりの居酒屋で、サラリーマンが仕事を野球に置き換えて話してるでしょ? 「4番バッターだけを揃えてもいいチームにはならない。送りバントができる2番バッターも必要なんだ」とか、「剛速球ばかりじゃなくって、変化球も織り交ぜて」とか(笑)。あれって、意外と腑に落ちるんですよね。やっぱり人って、対象をなにかにたとえて語ってもらったほうが理解が早いので。
 その意味では、プレゼンの達人が「これが俺のプレゼン術だ!」と自身のノウハウを語るより、僕みたいな別分野の人間が、別の角度から「マンガでいえばこういうことだよ」と語ったほうがわかりやすいのではないかと思います。  

— 本書で紹介されているマンガのテクニックって、たとえば読者にゴールを教える「バスの行き先理論」もそうだし、翌週に興味をつなぐ「引き」の技術もそうだし、本当にプレゼンに応用可能なものばかりですね。

三田 僕らマンガ家も、雑誌のなかで毎週読者にプレゼンしているわけですからね。特に新連載の第一話は、読者に「来週からも読んでみたい!」と思ってもらうことが先決で、そのぶんプレゼン的な側面が強くなります。  

— 逆に、マンガとプレゼンのいちばんの違いは?

三田 原則として、マンガは「引き算」で物事を考えていきます。最初に思いついたストーリーから余計な要素を削り、余計なコマ、余計なセリフを削りきって、ようやく最終的な作品が完成する。
 一方、世間一般のプレゼンは「足し算」になっているものが多い。シンプルな構成に対して、あれこれ情報を詰め込んでいるうちに、誰も見向きしないようなごちゃごちゃした資料ができあがる。きっと不安がそうさせているのでしょうが、情報が多すぎるプレゼン資料は読みづらいし、伝わらない。足し算を引き算に変える、発想の転換が必要だと思います。  

— そうやって作品をつくっていくとき、ある程度の読者像はイメージされているのでしょうか?

三田 かなり具体的にイメージしますね。僕の場合、著名人や芸能人で考えることが多いです。たとえば、現在連載中の『砂の栄冠』なら、「あの野球好きなお笑い芸人さんに喜んでもらいたいな」とか。そうやって具体的な個人をイメージしたほうが、結果として多くの読者に届くと思っていますので。  

— でも、プレゼン資料の場合だと、まずは上司の審査をくぐり抜けて、その上でクライアントに見せることになりますよね? そこのところがマンガと違ってむずかしいと思うのですが。

三田 いや、上司の目を気にするビジネスマンがいるように、マンガ家のなかにも編集者の目ばかりを気にする人はいます。編集者から OK をもらうことだけを考えるような。 でも、ビジネスとして考えるなら、最終的な顧客は読者であって、編集者はあくまでも仲介業者のような立場なんですよ。これはプレゼンもまったく同じで、上司に認められたからといって契約が成立するわけじゃない。自分にとって本当の顧客は誰なのか、しっかり見極めた上で考えるべきでしょう。

プレゼンを仕事と思うな!?

— 本書のおもしろいところは「プレゼンの教科書」でありながら、同時に「マンガの教科書」にもなっているところです。読ませていただいて、マンガの構造がかなり理解できたし、マンガの読み方が変わった気がします。

三田 よく「企画はクリエイティブワークだ」みたいなことを言いますよね? じゃあクリエイターにとっていちばん大切な能力はなにかといえば、分析力なんですよ。
 たとえるなら、完成されたプラモデルを見て、それをバラバラに分解し、なおかつ設計図まで引いてしまうような力。設計図まで引けるということは、「おもしろさ」の仕組みが理解できて、再現性が身についたということですから。  

— なるほど。

三田 今回の本はビジネス書ですから、マンガの設計図にまでは踏み込んでいません。でも、パーツに分解するくらいのところまでは説明したつもりです。だから本書と手元にあるマンガを頼りに、「マンガのおもしろさ」を分析するきっかけになってくれたら嬉しいですね。それはきっと仕事上のクリエイティビティにもつながることだと思うので。  

— それでは最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

  三田 まず理解していただきたいのは、プレゼン資料の作成は「仕事」じゃない、ということ。あなたにとっての「仕事」とは、そのビジネスを成功に導くことです。 たとえば、あなたが新商品の販促キャンペーンに関するプレゼンを任されたとする。このとき、「どうすればプレゼンがうまくいくのか」を考えるのではなく、「どうすれば販促キャンペーンがうまくいって、新商品が売れてくれるのか」を、もっと真剣に考えてほしい。結果として、そのほうがおもしろいプレゼンになるはずです。
 そしてプレゼンの「型」は、マンガをお手本にすること。日本のマンガには、偉大な先人たちが築き上げてきた「おもしろさの型」がぎっしりと詰まっています。マンガの構造を理解し、初歩的なテクニックをいくつか理解すれば、あなたのプレゼンスキルは飛躍的に向上するはずです。  

— 今回はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

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取材・構成:コルク

コルク

この連載について

初回を読む
プレゼンの極意はマンガに学べ!

三田紀房

人の心を操り、自由自在に動かす最強のプレゼンノウハウは「マンガ」にありました。超人気作品を次々と送り出し、cakesでも『会社に左右されない仕事術』を連載中の漫画家・三田紀房さん。三田さんが、マンガ制作の舞台裏を明かしながら伝授する最...もっと読む

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twtshi 「最近では多くのビジネスマンがプレゼンに力を入れています。でも、9割以上のプレゼン資料はつまらない」 https://t.co/7P2Qr1xVrD 約5年前 replyretweetfavorite