東京が大好きだ、それは下品だからだ

18年と8ヶ月一緒に働いた、唯一の同期である関口が会社を辞める。2016年、東京という街を生き延びた42歳のオッサンであるところの、ボクと関口。雨が降りしきる早朝の中目黒、煙草臭いワゴン車の中で、二人は話し始めた。ラジオから流れる音楽とともに、ひとつの〝から騒ぎ〟がまた幕を下ろそうとしていた――
フォロワー7万5千人のツイッターアカウント『燃え殻』@Pirate_Radio_さんの史上最大級のつぶやき、『ボクたちはみんな大人になれなかった』第二部です。

 アシスタントがエンジンを突然入れた。前方に目をやると駐車禁止を取り締まってる男たちが2人見えた。

「この辺り、とりあえず一周しますね」車は、左にカーブして大通りにでた。幸運なことに車量はまだまばらだった。関口が腕時計を見た。ボクも時間を確認する。タイムリミットまであと40分を切っていた。

 ワゴン車は大きく中目黒を一周して、また駅の脇の立ち食いそば屋の前に向かっていた。関口はずっと佐内とスーの話をしている。

 ボクはそれを聞きながら、あの頃の今よりもっと不確定で不安定だった心情を思い出して、心臓がすこし硬くなった気がした。

「朝だよ」スーはとても優しい笑顔だった。

 仕事に出て行こうと身支度をするボクに、裸のままうつ伏せに寝ていた彼女がポツリと言った。

「ねえ、手紙ちょうだい」

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ボクたちはみんな大人になれなかった

燃え殻

2016年まで生き延びた42歳のオッサンであるところの、ボク。1999年、ド底辺のお先真っ暗な二十代のガキであるところの、ボク。どっちもしょうもないけど、なんでだかあの頃が、最強に輝いて思える。夢もない、希望もない、ノーフューチャーな...もっと読む

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angelmikazuki |燃え殻 @Pirate_Radio_ |ボクたちはみんな大人になれなかった ボクはそれを聞きながら、あの頃の今よりもっと不確定で不安定だった心情を思い出して、心臓がすこし硬くなった気がした。 https://t.co/aWp6GoXInb 約3年前 replyretweetfavorite

HourRainbow 燃え殻さんの小説、一度も東京の住人になったことないけど、いつもどこかに東京への憧れと蔑みがあった理由がわかって小さく笑ってしまった。軽蔑は憧れからきてたんだ、きっと。 https://t.co/Gfzree4o02 3年以上前 replyretweetfavorite

ambitious212 一人じゃ抱えきれないから、 わたしも、わたしを縛るものをもうすぐ一つは預けて2つ捨てる https://t.co/ODNL6qxSOO 3年以上前 replyretweetfavorite

dots_dots_ 『サザンオールスターズの「私はピアノ」という曲が流れはじめた。原由子のやさしい声が…』 燃え殻さん、ありがとうございます(*´ー`*) ☞ 3年以上前 replyretweetfavorite