大ブーイングの中で
そして2015年の夏、棚橋は再び怒りを露わにしていた。しかも今回は他団体のエースに対して、明らかに自分とレベルが違う、と怒っているのである。ファンはその真意が掴めずに困惑し、「横一線にしてもらっては困る」と言われたDDTははっきりと棚橋発言に対して遺憾の意を表明した。
いわゆる「揉め事はリング上で決着を付ける」タイプの争いではないことを誰もが感じていた。棚橋はこの件について多くを語らなかったが、「何かを残して帰りたかったので辛辣な言葉になってしまった、G1クライマックスの直後で自分が殺気だっていたのもあった」と言った。なんとなくもやもやとしたものは残っていたが、これ以上どうにもならないだろうと私自身思っていた。
しかしその年の11月、棚橋弘至とHARASHIMAは再びリング上で向かいあったのである。DDTの中にあるユニット、#大家帝国の自主興行、という形だったが、棚橋は新日本プロレス若手の小松洋平、HARASHIMAは#大家帝国のリーダーである、インディーレスラーの大家健をそれぞれパートナーに引き連れてのタッグマッチだった。
DDTの、そしてHARASHIMAのファンでほとんど埋め尽くされた後楽園で、耳をつんざくほどの大ブーイングの中、棚橋は登場し、新日本プロレスの矜持を全身にまとってHARASHIMAと大家の前に立ちはだかった。試合はHARASHIMAが小松から勝利して終わったのだが、そもそも二度と対戦することはないだろうと思われた棚橋とHARASHIMAが向かい合っただけでも大きな衝撃だったのが、さらなる驚天動地の出来事が試合後に待っていたのである。