百鳥ユウカの心は、桜井で決まっていた。今日は約束の金曜日。あの人には奥さんがいるけど、運命の二人は私たちの方なんだから仕方がない。
ユウカは時計をひっきりなしに見ていた。部屋の中は、綺麗に掃除もしてある。女友達に見られてもまったく気にならないゴミも、桜井に見られるのは恥ずかしいから片付けてある。
自分らしく、本当の自分を見せられる、そんな安い言葉に連れられて、パートナーの前でオナラをしたり、すっぴんでもおかまいなく居られるような関係を否定するつもりはないけれど、ユウカにとってそれは負けだった。これはスタイルの問題。
部屋はいつも綺麗に、顔は家でも薄化粧。冷蔵庫にはビールと麦茶じゃなくて牛乳とミネラルウォーター。そんな生活を送りたいと思う。
相手から要求されてするんじゃなくて、私からそうしたいと思う男こそが、私の求めている男。
ピンポーン。
「きた♪」
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