ハヤカワ・SF・シリーズ》温故知新〈前篇〉

翻訳・解説・エッセイ・コラムと、SF界のオシゴトを縦横無尽にばりばりこなす超人・大森望氏。氏の〈SFマガジン〉誌上の連載コラム「大森望の新SF観光局」がcakesに出張! 今回はSFマガジン2016年8月号の特集「ハヤカワ・SF・シリーズ総解説」にあわせて、「新・SF観光局」の第27回を再録します(SFマガジン2012年2月号より)。

《ハヤカワSFシリーズ》の新版が出ると聞いたとき──というか、「コニー・ウィリスの『ブラックアウト』と『オールクリア』をその新しい叢書で出したいんですが」と相談されたとき──真っ先に訊ねたのは、「で、背の色は?」

「まだ決まってません」と言われた瞬間から、背が銀色でなければならない108の理由について(さらに、小口天地は茶色で、カバーのビニールはシマシマ加工でなければならない理由についても)ひとしきり大演説をぶったんですが、その後、本誌先月号のカラーページ告知を見て、思わず叫んだね。「重要な情報が一個も載ってないじゃん!」

重要な情報が載っていなかったカラーページ告知(2016年1月号)

 何が出るのかとか、カバーの絵柄がどうとか、そんなことはどうでもいい。重要なのは背の色とデザインだ。写真を載せるなら背中を見せろ!

 と悲憤慷慨した一週間後、刷り上がったばかりのハヤカワ文庫JA『21世紀SF1000』(絶賛発売中)を受けとるため、早川書房に立ち寄ると、おお、こちらも納品されたばかりのスコット・ウエスターフィールド『リヴァイアサン』の見本が! いや、だから著者もタイトルもこの際どうでもいい。問題は背だ!

 震える手で本をつかみ、まじまじと背中を見る。

 おお、美しい銀色じゃないですか。赤の亀甲マークにSFの文字が白抜き。旧《ハヤカワ・SF・シリーズ》(以下、HSFSと略)のひしゃげた六角形と違って正六角形ですが、細かいことにはこだわるまい。ビニールカバーがシマシマのザラザラじゃなく、(最近のポケミスと同じ)スベスベのツルツルなのも男らしく受け入れよう。

第一回配本、スコット・ウエスターフェルド『リヴァイアサン-クジラと蒸気機関』

 おお、整理番号は5001と来ましたか。旧HSFSは、ポケミスが2000冊以上出ても大丈夫なように(推定)3001番からスタートしたわけですが、きっと4000番台は、いつか《新☆ハヤカワ・ミステリ》が出るとき用に空けてあるんだな──と思ったら、4000番台は《ハヤカワ・サスペンス》が予約済なんでしたね(4001番の早川書房編集部編『十三階の女現代恐怖小説集1』一冊きりしか出てないけど)──などとひとり合点をしつつ、おもむろにビニールカバーを引っぺがし、帯をはずす。背の下部には墨ベタが引いてあり、白抜きで “H・P・B” の文字が。ハヤカワ・オンラインの近刊紹介ページでは、なぜかHPBじゃなくて単行本に分類されてたけど、これも立派な《ハヤカワ・ポケット・ブックス》の仲間なのである。

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大森望の新SF観光局・cakes出張版

大森望

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コメント

hirotogyangorou https://t.co/duGw0dO1qE 3年以上前 replyretweetfavorite

ataru_mix ああ、大森さんが珍しくドルヲタじゃなくSFの人として書いている。 早川銀背の新刊に間に合わなかったほぼ同世代として、それゆえのこだわりはよく分かる。 3年以上前 replyretweetfavorite

ogiwaka 飯田橋のミステリ書店、深夜プラスワンを思い出した。ザラザラのシマシマ! 3年以上前 replyretweetfavorite