あたらしい働き方を提案する「アライアンス」とは?
渡辺由佳里(以下、渡辺) 第1回の最後で、働き方について話をしていたとき、「アライアンス(ALLIANCE)」についてちょっとお話が出ましたが、もう少しお話きかせてください。
篠田真貴子(以下、篠田) はい、ぜひ。
渡辺 書籍のタイトルにもなっている「アライアンス」という英語は、国と国との提携関係みたいなものを指す言葉ですよね。この本のなかでは、それが個人と企業の関係に当てはめて語られています。つまり、企業と個人の雇用関係も、従来の雇用者・被雇用者という上下の関係ではなく、独立したもの同士の対等な関係として結ぶことができるというお話で。
篠田 はい、そうなんです。働くということを、これまでとは違った新しい視点からとらえ直しています。そうした働き方をすでに実践している例は少なくないのですが、それをきちんと見えるようにした、画期的な概念だと思います。
渡辺 会社と従業員って感じじゃなくて、それぞれがちゃんと責任を持って自立して、フラットに繋がっているイメージなんですよね。ギブアンドテイクというか、一方的ではない対等な関係。そこから生まれる「信頼」を重要視するのが、「アライアンス」という考え方ですよね。
篠田 そうなんです。で、その関係のありかたを個人と企業の間での約束事の3つのパターンに整理しています。これが日本の文脈にも十分当てはまるなと思うところで。ここがすごく大事だと私思っているんです。
渡辺 個人と企業のあいだの約束事、というのは、日本人には想像しにくい概念ですよね。
篠田 そうですね。会社は事業の目標を実現したい。個人はその人なりの成長をしたい。お互いにそれが実現できるよう、ニーズを認め合い尊重し合って、お互いに何を相手に提供するか、そして何をしてほしいのか、を約束し合います。その約束に3つのパターンがある、ということですね。
渡辺 3つのパターンを読むと、意外と日本人の働き方にも一致しているんですよね。
篠田 1つ目は、「ローテーション型」っていう、いわばルーティーンの仕事のタイプ。2つ目の「変革型」っていうのは、その会社が新しいチャレンジをするときに、そこを自分のキャリアのステージと重ねてがんばるタイプ。3つ目の「基盤型」は、会社のあり方と自分の人生が一致しているタイプ。アライアンスが提唱する働き方のパターンには、この3つがあるんです。
『ALLIANCE』60ページより
篠田 日本の企業って、終身雇用っていうのにマスクされて、見えにくくなってはいるんですけど、この3つすべてのパターンの働き方があると思うんです。
—— なるほど。
篠田 まあ、「ローテーション型」はわかりやすく、普通にルーティンで組み立てられている仕事ですよね。で、たとえば「アフリカ市場開拓してこい」とか言われて、初めて一人目の駐在員として開拓に行く、みたいなのは、明らかに「変革型」ですよね。新規事業を始めるとか、それを託された社員っていうのはその時期は変革型のコミットメントなはずなんです。
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