ホームルームで生徒から受けた衝撃の洗礼

30代前半にして都内の某私立高校で教師をすることになった海老原さんが、学校内で起こるさまざまな出来事を綴っていく本連載。第2回目は、新2年生のクラスで起きた出来事についてです。4月のクラス替えから5月のスポーツ大会までの間に、海老原さんの心は激しく揺れ動いたようです。そして、ホームルームで生徒たちから受けた衝撃の洗礼とは…?

高校2年生になりたての頃を、覚えてますか?

新しい環境にも慣れ、1年次の人間関係からもクラス替えで解放され、こわそうな旧3年の先輩も卒業し、おまけに可愛いがるべき後輩もできる。

多くの新2年は、悠々自適の4月を迎える。

だけど、新しい人間関係をイチから築くのは大変。クラスで「浮かない」か、友人とはうまくやっていけるか? 4月、教室は「静かな戦場」でもある。

そして、2年目の4月は担任教師側も大変。クラスの人間関係や雰囲気にとことん気をくばる必要がある。「イジり」が「イジメ」に発展する気配はないか? 今何かと話題のクラス・カースト(クラス内の階級)が、目にあまるものになっちゃいないか?

あの定番スローガンとは正反対の学級目標

僕の受け持つ新しいクラスでは、さしあたりそうした心配はなさそうだった。むしろ昨年度に比べて、ちょっと静かすぎとも思えた。こうなると今度は、文化祭とか体育祭をちゃんとこなせる(盛り上がれる)かが頭にちらつく。

教育業界でいう、「クラスの〈核〉になる生徒」が、どうも僕のクラスには見あたらなかった。簡単にいえば、クラスを盛り上げ、引っ張り、教師と協調して動いてくれる生徒のこと。

そうした生徒がいなければ「創ればいい」との考えもある。教師が「こいつは!」と思った生徒にいろいろ働きかけ、〈核〉として覚醒させる。けど、生徒は教師のあやつり人形ではない。そもそも教師は、神じゃないし。

そんなだから、まずは静かなクラスをじっと見守ることにした。そしてクラスのスローガンには、こう掲げた。「社交的たれ、されど群れるな」。心は開いていてほしいけど、無理に他人へ合わしてほしくない。

これは、スポーツ界から教育界に黒船としてやってきたあの定番スローガン、One for All, All for One(一人はみんなのために、みんなは一人のために)とは正反対。

僕自身、高校生の頃けっこう「ぼっち」だった。独りでいたい生徒が、クラスで安心していられることだって、地味だけど大事だ。

うん、それでいい。自画自賛の4月。

あまりにもさびしくて、スポーツ大会に一縷の望みをかける

とはいえ、やや心配になってきた5月。

自分のクラスで授業をやっても、盛り上がるべきところで盛り上がらず、淡々と進めるほかなく、他クラスに比べてスムーズすぎる。ジョークも自主規制……。授業をやってて、あまりにさびしい。

なんでだ? ひょっとして、「群れるな」の部分がゆきすぎて、生徒たちが全然打ちとけてなかったりして? 懸念が深まった。

でも! GWあけにはスポーツ大会がある。チャンス!

結局、スポーツ界から学級目標の定番に横すべりしたあのスローガンが大嫌いなくせに、そのスポーツに、クラスの雰囲気改善を期待する自分がいた。

サッカーやバスケで、盛り上がるべし。そして、クラスの仲や雰囲気を、今よりかはよくするべし。祈った。背に腹はかえられぬ!

スポーツ大会当日。いろいろなクラスを観察すると、そんなに飛ばすか?というほど不自然な声援が、総立ちになった生徒から飛びかっていた。男子に向けても、女子に向けても。グループにかたまって、どこか不自然な声援を送りつづける。

その姿は、ちょっぴり痛切だった。

新たな人間関係を創るべき新学期の5月。十代なかばは、大変だ。日々、人間関係の渦の中でもがいている。そこで「浮かない」よう、へとへとになって気を配る。

その一方、脇には、体育座り(なつかしいでしょう)になって、一人ずつ、じっとプレーを見物する「抵抗者」もちらほら。彼らの存在は頼もしいけれど、教員という立場からは、その子たちがクラスで「浮かない」か心配になる。

じゃ、我がクラスは? 結果としては、わりと盛り上がった(ホッ)。俗にいう「黄色い声援」も、男子のゲームの際には大きかったようだ。クラスにお目あてがいようがいまいが、こういうとき、男子の多くはがんばる。そういう生き物らしい。

なんだ、普通じゃないか。いい意味で。

放課後、職員室を訪ねてきたクラス委員

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
教室では言えない、高校教師の胸の内

海老原ヤマト

一般企業に就職した後、私立高校で先生をすることになった30代前半の新米教師が、学校内で起こるさまざまな出来事を綴っていきます。教室や職員室での悲喜こもごも、そして生徒の言葉から見えてくる、リアルな教育現場とは?

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

tipi012011 あぜん。。 3年以上前 replyretweetfavorite

anbyk cakesで始まった教員の連載面白いけど、この回は衝撃。教員が生徒に現金を生であげるなんて。しかもこの書き方だとポケットマネーっぽい?驚きを隠せない。 > https://t.co/eq4je4JMgg 3年以上前 replyretweetfavorite

megamurara 凄い世界。自分もいたのかと思うほどに。 3年以上前 replyretweetfavorite

NbuePxjvDdgYtsQ こういう若者からの洗礼、会社でもあるよね。 3年以上前 replyretweetfavorite