くるり佐藤征史「変化する音楽市場の中で、ミュージシャンはどうインターネットと付き合うか」

cakesの姉妹サービス「note」で、ファンクラブ「純情息子」を運営中のロックバンド・くるり。くるりのベーシスト兼所属事務所代表の佐藤征史さんが考える、ミュージシャンのメディアの活用方法とは?
cakes3周年シリーズインタビュー企画の特別編として、弊社代表加藤貞顕が聞き手を務めます。

くるりがファンクラブをnoteで運営する理由

加藤貞顕(以下、加藤) cakesの「メディアビジネスの未来・特別版」にご出演いただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

佐藤征史(以下、佐藤) こちらこそ、よろしくお願いいたします。

加藤 この企画は、メディアビジネスがインターネットで変わっていくこの時代に、いろんなチャレンジをしている方にお話をうかがっています。くるりは、新事務所設立を機に、noteでファンクラブをはじめていただいてからのお付き合いですよね。

佐藤 はい。2014年4月、事務所を新しく立ち上げたばかりの頃、ファンクラブを自分たちでどう運営していこうか考えていました。それまでは、郵便局で振込用紙に名前と住所を書いてもらって、年間費用を振り込んでもらって、紙の会報を定期的に発送するという仕組みで運営していました。

加藤 それを、どんな風に変えたいと考えていたんですか?

佐藤 事務所を独立して、すべて自分たちでやっていくことにしたので、ファンの方がもっと喜んでくれて、なおかつ手軽に運営できるいい方法はないかな?と。

加藤 なるほど。

佐藤 はい。それで、知り合いだった津田大介さんに高円寺の居酒屋で相談したところ、「今日ちょうど知人がはじめたサービスが、そういうファンクラブの運営ができそう」とおっしゃって、その場で加藤さんに電話をかけてくれたんです。

加藤 すごい偶然なんですが、ちょうどその日が、2014年の4月の、noteがサービスをリリースした日の夜だったんですよね。いきなり津田さんから電話がかかってきて、すぐに打ち合わせの日程を決めました。それから数日後には、メンバーみなさんで会社にいらしてくれて。

佐藤 それからnoteでファンクラブ「純情息子」を運営しています。月額300円の継続課金マガジンを作って、その中で文章・写真・音源・動画を使った記事を投稿したり、ライブチケットの先行販売や、デビュー前の楽曲音源の販売なども行っています。アプリもあるので、メンバーとスタッフで担当を決めて、ほぼ毎日更新しています。

加藤 noteは、インターネット上で個人ごとにメディアが作れるサービスとして作ったので、クリエイターの方に、まさにそういう使い方をしてもらいたいと思っていたんです。

iPodが変えた音楽市場と、iPadが変えた出版市場

佐藤 そもそも、どうしてnoteのようなサービスを作られたんですか?

加藤 僕はかつて、出版社で書籍の編集をしていました。2010年iPadが出た頃に、出版がインターネット上のコンテンツと競合するようになって、市場環境が、がらっと変わったんです。音楽の場合は、その10年前にiPodが出ているんですけど、その頃、音楽の市場が変わったと感じませんでしたか?

佐藤 それは、感じましたよ。iTunesで楽曲の単品買いができるようになり、僕たちアルバムアーティストとしては厳しくなるなと思いました。

加藤 単純に、客単価が小さくなりますからね。実際、統計データをみてもCDの時代って、客単価が2000円くらいなんですよ。それが、iTunesがはじまって以降、300円くらいになってしまいました。

佐藤 3000円のアルバムと1000円のシングルCDから、1曲250円で買える時代になりましたからね。

加藤 はい。

佐藤 レコードショップも減りましたよね。今あるレコードショップも、売り場の半分くらいをDVDが占めていたりして。

加藤 同じように書店も減っていき、音楽業界で10年先に起こっていたことが、出版業界でも起こりはじめました。インターネット上では、音楽ならiTunesがありますし、本ならAmazonのKindleで買える。そして、そもそもお金を払わなくても無料のコンテンツも溢れていますよね。

佐藤 Yahoo!ニュースとか、YouTubeとか。

加藤 はい。それで、インターネット上に最適なコンテンツの売り場がないと、面白いものがどんどん減ってしまうんじゃないかと思ったんです。クリエイターが収益をネット上であげられないと、面白いものが減っていき、結局、消費者のみんなの幸せ度合いも減ってしまうんじゃないかと。

佐藤 確かに、昔はCDが売れていたので、レコーディングにもお金をたくさんかけてもらっていました。

加藤 レコード会社も出版社も、昔はめちゃくちゃ儲かっていたから、制作費用をかけられていたんですよね。それがなかなか難しくなった。
それでぼくらは、雑誌のようなコンテンツの集合体に課金ができるcakesを作り、その後に書籍のように個人ごとにメディアが作れて課金もできるnoteを作りました。

佐藤 ネットとどう付き合っていくかは、すべてのクリエイターの課題ですよね。

次回「インターネットやフェスで変わった、ミュージシャンの生活」は6/17更新予定

佐藤征史(さとう・まさし)

1977年、京都生まれ。ベーシスト。1996年、立命館大学の音楽サークル、ロックコミューンにて岸田繁と森信行とくるりを結成。 室内楽からサイケ・オルタナ・フォークまで様々な要素をリズム&ブルース・マナーで演奏。 株式会社NOISE McCARTNEY代表。 Twitter:@Sato_Qrl



佐藤征史の楽曲レビューや岸田繁の日記、
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くるり official note

この連載について

メディアビジネスの未来【特別編:くるり佐藤征史】

cakes編集部

cakesの姉妹サービス「note」で、ファンクラブ「純情息子」を運営中のロックバンド・くるり。くるりのベーシスト兼所属事務所代表の佐藤征史さんが考える、ミュージシャンのメディアの活用方法とは? cakes3周年シリーズインタビュー...もっと読む

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コメント

kyokoseimiya note ってミュージシャンのファンクラブ運営に使えるんだね:https://t.co/JgC3A9LWx7 2年以上前 replyretweetfavorite

yakutase 改行位置の関係で「ファンクラブ」を「ファンク・ラブ」と勘違いした https://t.co/I6bh4n6fFy 2年以上前 replyretweetfavorite

kirihara_aoto 「クリエイターが収益をネット上であげられないと~」本当にその通りだよ…! 2年以上前 replyretweetfavorite

salesmarkets #マーケティング 2年以上前 replyretweetfavorite