ここは東京西新宿。医療器具メーカー「ドブ板メディカル株式会社」では、定時になってもみんなもくもくと働いています。
そんななか、3年目営業の出来内陽太(デキナイヨウタ)は、
陽太「すいません。今日は帰らせてもらってもいいですか?」
てへぺろっと申し訳なさそうに言いました。
馬路出(マジデ)課長「あぁ?」
とブチ切れそうに言うのは、営業企画部のマジで仕事ができる馬路出課長です。
馬路出課長「今週末の学会に出すブースの準備もまだできてなくて、今月の営業目標もぎりぎり未達なのに定時で帰るとか、仕事なめてるっていうか、何ソレ死ぬの?」
陽太「率直かつ容赦ないモラハラ!」
ひぃ!と陽太は縮みあがりました。
陽太「いや、本当にすいません。妹が急用があるとか言って上京してきまして……」
屑谷先輩「なに? お前妹いるの?」
ひょこっと同僚の屑谷先輩が口をはさんできました。
陽太「あ、はい。4つ年下で、看護師として地元で働いてるんですけど」
屑谷先輩「お前の4つ下……21歳、看護師……彼氏いるの? どこ住み? ラインやってる?」
陽太「やめてください! 会ってもいない妹を性的な目で見ないでください!!」
馬路出課長「まあまあ」
ごほんと馬路出課長が咳払いしました。
馬路出課長「まあ家族がらみならしょうがないか。今日は早く帰っていいぞ」
陽太「本当ですか! ありがとうございます。明日からめっちゃ働きますんで! お先に失礼しますー!!」
と、陽太はどたどたとオフィスを出ていきました。
馬路出課長「……陽太の妹か……」
屑谷先輩「めっちゃいろいろできなそうっすよね」
馬路出課長「……俺もそう思う」
陽太の後ろ姿を見送って、二人はうんうんとうなずくのでした。
陽太「ごめんごめん、未来ちゃん」
待ち合わせ場所のスタバで、陽太は妹の出来内未来(デキナイミライ)にこれまたてへぺろと謝りました。
未来ちゃん「おっそいよ~お兄ちゃん」
そう言って未来ちゃんはぶーたれました。
未来ちゃんは、陽太に似ているかと言われればまあまあ似ている、茶髪でちょっと派手目の女の子でした。
陽太「ごめんごめん。それでどうしたの? 急に。正月ぶりじゃない?」
未来ちゃん「実は結婚しようと思って」
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