茂木健一郎 /北川拓也
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第3回】ハーバードで、マイケル・サンデルに「説得力」を学ぶ。
ハーバードの教授と、日本の大学教授の一番の違いはとは何か。今回はこの問いから、イノベーションやサイエンスの分野において力を発揮する、ある「力」についての話が展開する。
若き理論物理学者・北川拓也と、日本に拠点を置き、縦横無尽に活躍する脳科学者・茂木健一郎。両者の対話によって、日本とアメリカの文化、教育の違いを浮き彫りにしつつ、沈み行く日本がここから変革を起こすことができるのかを探る。
「答え」がひとつではないのがリアル・ワールドだ
北川 茂木さん、僕が感じている、ハーバードの教授と日本の大学教授の大きな違いってなんだと思いますか?
茂木 おお! それはおもしろい観点だね。なに?
北川 それは、人を説得して、動かす力の大きさです。
茂木 ほう。
北川 ファンディング(資金調達)の仕方もまったく違うんです。ハーバードの教授は、自分の研究の必要性や重要性を、外部に訴えるのが本当にうまい。たぶん、日本の大学教授が、アメリカでファンディングしていくことは難しいかと思います。説得力をつけることは、僕自身がハーバードで学んだことでもあります。最も大きな学びだったかもしれません。
茂木 へえ、どうやって学んだの?
北川 エッセイの課題からです。僕、マイケル・サンデル教授の、政治哲学の観点から正義とは何かを考える「JUSTICE」の講義(日本ではNHK「ハーバード白熱教室」として放送)をとっていたんです。あの講義は、テレビで放送していた大教室の授業とは別に、サブグループに分けたSectionというクラスがあるんですよ。そこでは、少人数でディスカッションなどをするんです。
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この連載について
茂木健一郎 /北川拓也
日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。
ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む
著者プロフィール
1962年生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。東京大学理学部物理学科、同大学法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学研究員を経て現職。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚のもつ質感)をキーワードとした、心脳問題についての研究を行なっている。全国各地での講演活動や、テレビ出演、雑誌への寄稿など精力的に活動し、Twitterのフォロワーが50万人を超える(2013年8月現在)など、その発言は若者から中高年まで多くの日本人に注目されている。
Twitter:@kenichiromogi
1985年生まれ。灘中学校、灘高等学校を卒業。高校時代に化学オリンピックで国内最優秀賞を受賞。高校卒業後、現役でハーバード大学に合格。数学、物理学科を専攻し、ダブルメジャーで最優等の成績をとり卒業。その後ハーバードの大学院に進み、2013 年、博士過程を修了。今までに15本以上の論文が国際雑誌(Science, Nature communicationsなど)に取り上げられ、その内の3つの論文が編集長に特別に重要な論文として指定された。世界中の物理学者と共同研究をし、これまで20以上の研究所や国際学会で招待講演をしている。現在は、楽天でデータサイエンスのチームを率いている。
Twitter:@takuyakitagawa